中小企業がM&Aで失敗しない「買い手」になるために 知るべき「3つの目利き力」(2/2 ページ)

» 2026年02月25日 08時00分 公開
[中根ほづ美ITmedia]
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“水面下”で進む1年半の交渉

 伊藤さんによると、商工中金が仲介に入る事例では、M&Aには1件当たり1年から1年半の期間を要するという。同社では、大きく分類して7つのステップで、M&Aをサポートしている。

photo02 売り手側に立った場合のM&Aのプロセス(提供:商工組合中央金庫)

 仲介業者を通さず企業同士が直接やり取りをすれば、短期間で締結まで進められるのかと言えば、それも難しいのが実情だ。

 売り手と買い手の双方にメリットとなるマッチングは容易ではない。さらに、取引にリスクがないかを見極める第三者の視点も欠かせない。さらに、M&Aの交渉は常に「情報漏えい」というリスクも抱えている。

 「情報が漏れて噂が立てば、M&Aは上手く進みません。本当に最後の握手をするまで、気の抜けない展開が続くのです」

 多くの場合、売り手企業のトップは社内に内密でM&Aを進める。トップ自身が派手に動けば情報漏えいのリスクが高くなるため、仲介業者などのアドバイザーが間に入って交渉を進めることになる。

 これは買い手企業にとっても重要で、もし売却を検討していることが従業員に漏れれば、不安になった人材が退職し、当初想定していた人材を獲得できない可能性も出てくる。

成否を分けるアドバイザー選び

 最後に、重要なのが仲介するアドバイザーの選定だ。M&Aの成否は、誰と組むかで大きく左右される。

 しかし、現状、M&Aのアドバイザーを名乗るための資格は存在せず、自ら“専門家”を名乗れてしまう状態だという。中には、成立後のリスクを十分に検討しない業者もあるという。

 「“手を挙げれば専門家を名乗れてしまう”という現状に危機感を抱いています。一定の資格制度や基準の整備は必要でしょうし、適切な資格や実績を持つ専門家に相談することが、結果として正しいM&Aの選択につながる――そうした認識を広く啓発していくことが重要だと考えています」(伊藤さん)

 買い手として失敗しないためには、長期的な信頼関係に基づく伴走者を選べているかどうかも、成否を大きく左右する。

 国内のM&Aの成立件数は増加傾向にあり、業種や地域をまたいだM&Aも一定数見られるなど、新たな可能性が広がっているという。

 M&Aは企業文化やノウハウを継承し、雇用を守る可能性を持つ。ひいては日本経済にとっても重要な役割を担い得るとも言える。だからこそ、価格の妥当性、人材への配慮、信頼できる伴走者――その全てを見極める力が、買い手企業には求められている。

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