医療データの連携、活用が進展しない。医療機関が使う「電子カルテシステム」は、データの仕様や形式がメーカーごとに異なるため、互換性に難がある。メーカーの囲い込み(ベンダーロックイン)やセキュリティ対策などの課題も「医療DX」を阻む原因の一つだ。
「医療データの分断を、もしかしたら富士通が引き起こしてしまったかもしれない」――こう述べたのは、富士通の時田隆仁社長CEOだ。
富士通は、傘下の富士通Japanを通じて国内の病院約1600院、診療所約2850院に電子カルテシステムを提供している。同社は、医療DXにどのような影響を及ぼしたのか。時田社長が見解を語った。
富士通は5月19日、ソフトバンク、三井住友フィナンシャルグループと医療分野で業務提携し「国産ヘルスケア基盤」の構築を目指すと発表した。医療データを蓄積する「データプラットフォーム」と個人向けヘルスケアアプリを開発する。医療現場の効率化を図り、年間5兆円の医療費を削減する構想だ(関連記事)。
電子カルテシステムを長年手掛ける富士通は、データプラットフォームの開発を担当する。病院関係者が同社に寄せる課題感や懸念を踏まえ、その解消を狙う。
「医師や病院関係者から『地域間や病院間でのデータ連携の遅れがもたらす国家競争力へのネガティブな影響』『IT化やDXに対する予算の逼迫(ひっぱく)』『システム標準化の必要性』などいろいろな意見を伺っている。当社も自分ごととして捉えている」(時田社長)
こうした課題を念頭に置き、富士通の課題認識について述べたのが冒頭の発言だ。
「『電子カルテ一本やり』というか、病院の先生向けに電子カルテを提供していたと言っても過言ではない。病院のITシステムは本来、患者にどのような利便性や価値を届けられるかが目的のはずだ。医療データの分断を、もしかしたら富士通が引き起こしてしまっていたかもしれない。積極的にそこに踏み込む」(時田社長)
国産ヘルスケア基盤のデータプラットフォーム構築に当たって、時田社長は電子カルテシステムを提供している企業の賛同が重要だとする。多くの企業が参加すれば、データの連携や標準化が加速するはずだ。
一方で、電子カルテシステムを提供する各社は競合する立場でもあり、時田社長は「システムを選ぶのは医療機関や患者であり、われわれが押し付けるものではない」と強調した。
国産ヘルスケア基盤は、国内病院の約半数に当たる4000院への提供を目指す。少子高齢化が加速する中、医療DXは急務だ。富士通は、医療データの分断を解消し、医療の新たな地平を切り開けるか。
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