中小企業がM&Aで失敗しない「買い手」になるために 知るべき「3つの目利き力」(1/2 ページ)

» 2026年02月25日 08時00分 公開
[中根ほづ美ITmedia]

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 中小企業のM&Aが注目を集めている。

 「身売りではないか」とネガティブなイメージを抱かれることもあるM&Aだが、後継者不足に直面する企業にとっては、有効な事業承継の選択肢の一つだ。

 しかし、全てのM&Aが成功するとは限らない。M&Aにおける株価算定は「ブラックボックス」になりがちで、適正価格が分かりにくい。

 売り手は売却が完了すれば一区切りつくのに対し、買い手の苦悩は買収後に始まる。膨大な資金を投じて会社を手に入れたものの、思ったような業績が出ない、あるいは期待していた優秀な人材が次々と辞めてしまう――。こうした事態に陥れば、M&Aは一転して大きな経営リスクとなる。

 一方で、少子高齢化が進む日本において、多くの中小企業が人手不足に悩まされているのも事実だ。ゼロから採用し、育成するコストを考えれば、すでに熟練のチームが存在するM&Aは、人手不足を解消する有効な手段となる。

 さらに、商工組合中央金庫(以下、商工中金)M&Aアドバイザリー部の伊藤孝浩部長は「中小企業のM&Aは、地域経済や雇用維持に直結する社会的な側面を持つ」とも話す。

 商工中金の知見を基に、買い手が知っておくべきポイントを整理する。

photo01 商工中金M&Aアドバイザリー部の伊藤孝浩部長(編集部撮影)

「適正価格」の裏側にあるジレンマ

 中小企業のM&Aにおいて、売り手と買い手の双方がまず直面するのが「この価格は妥当なのか?」という疑念だ。上場企業と違い、非上場の中小企業の株価には絶対的な指標がない。

 仮に100万円で設立した企業であっても、価値が数十億円になっていることもある。

 事業承継には、親族や自社の従業員が承継する方法もあるが、企業の価値が上がっていると親族や従業員といった個人が買収するのは難しいケースも多い。これが、事業承継を検討する売り手企業がM&Aを決断する理由の一つだ。

 M&Aでは、売り手と買い手の合意によって最終的な価格が決まるが、その算定過程は「ブラックボックス」になりやすい。

 伊藤さんは「日本の事業承継が進まない大きな理由が、適正価格を定めるのが難しい点にあると考えます」と話す。

 透明性を高め、株価の算定方式を明示し、売り手と買い手が納得する形で価格を定めることが重要だ。

 買い手側は希望を伝える際に、一方的に金額を押し付けるのではなく「なぜその価格を提示しているのか」「購入の目的」などを開示することがスムーズな取引につながる。逆に売り手側の希望価格の根拠を把握し、企業が積み上げてきた資産や収益力を冷静に評価できる目を養うことが、失敗しない第一歩となる。

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