「楽になった分は、サボっていいよ」 老舗建設社長が社員にアプリ3000個自作させたワケ特集「AI時代の全社横断DX」(2/2 ページ)

» 2026年02月26日 07時00分 公開
[中根ほづ美ITmedia]
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「楽になった分、サボっていい」という思想

 「全員DX」は、社長の号令だけで実現しているわけではない。専任のDXチームが各部門のアプリ制作や課題解決をサポートしている。

 DXチームは、社内にDXをより浸透させる取り組みも推進している。その一つが、年に一度開催する「DX大会」だ。各部門・チームがDXによる業務改善の成果をプレゼンし、優勝チームには賞金が贈られる。成功事例を社内で横展開するための施策となっている。

photo03 「DX大会」の様子(提供:後藤組)

 また、同社では独自の「社内認定資格制度」を構築。IT人材に求めるスキルを定義し、段階的な資格試験をオリジナルで用意している。試験には「アソシエイト」「スペシャリスト」「エキスパート」の三段階が設けられており、合格すれば奨励金が支給される。

 「スキルを磨けば業務が楽になり、奨励金も得られる」という明確な仕組みが、従業員のモチベーションを支えている。

photo04 独自の「DXスキル表」(出典:後藤組「DX戦略2025」より)

 「よく社外の人から『効率化して、空いた時間に何をさせているのですか』と聞かれることがあります。しかし、空いた時間に別の仕事をさせようとしたら、従業員はDXなんてやりません。楽になった分、サボっていい。そう言わなければ人は知恵を絞らない。実際に楽になった従業員は、空いた時間でまた新しい付加価値を自ら見つけてくるものです」

次は生成AIへ――「DX2.0」の構想

 現在、後藤組は「DX2.0」として生成AIの活用に舵を切っている。2025年10月に開催されたDX大会では「生成AIを用いた事例」にテーマを絞った。

 後藤社長は、生成AIにできることを以下の3つに整理し、従業員に徹底させている。

1.「調べる」時間をなくす:

 RAG(検索拡張生成)を活用し、社内規定や手続きフローを参照できるようにし、社内での問い合わせや過去の資料を探す時間を短縮する。

2.「書く」ための0から1を任せる:

 施工計画書や安全計画書など、膨大な文書作成が必要な建設業において、最初のドラフトをAIに作らせる。従来は100%の力で書いていたものを、AIが作った土台を50%の力で手直しするだけで済むようにする。

3.暗黙知を形式知にする:

 ベテランの脳内にある「暗黙知」を、誰でも使える「形式知」へと変換。建設現場には、図面に描かれないベテランの技があるため、その技をAIに学習させることで、若手に継承できるようにする。

 今では、若手の中に「生成AIがなければ業務が成り立たない」と話す従業員がいるほど、生成AIの活用は現場に深く浸透している。

 後藤社長は多くの企業がDXに失敗する理由を「DXが目的になっているから」と断言する。「DX認定を取ること」「ツールを導入すること」が重要ではなく、DXはあくまで手段。目的は“頑張らない仕組みを作ること”だと言い切る。

 その成果は業績にも表れており、後藤組の2025年5月期の売上高経常利益率は10%強で、建設業界平均の5%を大きく上回る。

 「全員DX」とは、全員に負担を強いることではない。誰もが無理をせず成果を出せる仕組みを作ることこそが、後藤組の競争力の源泉となっている。

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