生成AIの本義は「自動化」にあらず 今こそ広告業界が考えるべきポイントとは?(1/4 ページ)

» 2026年02月27日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]

著者プロフィール

佐久間俊一(さくま しゅんいち)

レノン株式会社 代表取締役 CEO

グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティング、ベイン・アンド・カンパニーなどで小売業・消費財メーカーを担当。2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。


 生成AIの進化は、広告業界に大きな変化をもたらしています。コピーを書き、デザインを起案し、Webサイトのコーディングや動画作成を行う――こうした制作工程の自動化は分かりやすいインパクトですが、本質的な変化はそれだけではありません。制作、営業、分析、戦略設計、組織運営に至るまで、広告業務全体の在り方を静かに、しかし確実に塗り替え始めています。

出所:ゲッティイメージズ

広告制作・営業の現場に生成AIがもたらしている変化とは?

 まず目に見えるのは制作の高速化です。広告コピーは数十、数百パターンを瞬時に生成でき、バナーやキービジュアルも短時間で量産できます。動画の構成案や絵コンテのたたき台も即座に用意されます。

 従来は数週間かかっていたキャンペーン準備が、数日単位で試作・検証まで進むケースも珍しくありません。広告制作は「完成品を作る作業」から「高速で仮説を検証するプロセス」へと性格を変えつつあります。

 市場調査や戦略設計、ターゲットのペルソナから販促施策アイデアまでも高速化・高度化されます。しかも、それがクライアント側でも実行可能な状態になったことは大きな変化です。これが生成AIが広告業界に及ぼした最も大きな脅威かもしれません。

 営業の現場にも変化が広がっています。商談の音源を生成AIに読み込ませ、営業トークを構造化し、改善点を抽出する取り組みが進んでおり、会話の速度や抑揚、価格提示のタイミング、顧客の反応との関係などを分析し「課題の深掘りが不足している」「説明の順番を入れ替えた方がよい」といった示唆を提示してくれます。

 トップ営業の暗黙知が可視化され、再現可能な“勝ちパターン”として組織に共有できるだけでなく、ベストなモデルを評価制度に組み込み、営業評価の軸そのものを刷新することも可能になるでしょう。成果だけでなく、プロセスの質や構造的な妥当性を評価する仕組みへと移行できるからです。属人的な「経験」や「勘」に依存していた部分が、データと構造に基づく再現性のあるモデルへと変わり始めています。

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