“目的”の違いは、燃えやすさの差も生む。「日常生活の一部」として利用するか、はたまた「非日常を楽しむため」か。富士そばは明らかに前者だ。それに対して、観光施設は後者と分類できる。二重価格の炎上しやすさは、生活の密着度と無関係ではないだろう。
では、「立ち食いそばとラーメン店の違いは?」と、疑問に思う読者もいるはずだ。あくまで筆者個人の分析でしかないが、日本におけるラーメン店は、もはやわれわれにとってもアトラクションであり、観光地の一種になっているのではないかと考えられる。
ラーメン店では数時間待ちの行列も当たり前だが、立ち食いそばでは並んでも数分が一般的だ。また、問題視された店のような“横浜家系ラーメン”の場合、麺のゆで加減や、油・タレの量を調整できる。
いわゆる“二郎系ラーメン”の店舗で、「ヤサイニンニクアブラカラメ」といった難解な注文で無料トッピングを頼むのと同様に、ある種のスリルとカスタマイズ要素から、ラーメン店にゲーム性を感じる人は少なくないはず。ラーメンは国民食でありながら、非日常を味わえるコンテンツでもあるのだ。
さて、ここまで「なぜ二重価格は燃えやすいのか」を考察してきたが、とはいえ昨今の物価高では、価格転嫁したいとの声があっても不思議ではない。また、円安で「安価に行ける観光地」として日本が位置付けられている現状から、為替差で優位にある外国人観光客に目を付けるのも、商売として理解できなくもない。
となれば、どうすれば穏便な着地となるのか。「どこも導入しているから」といった主体性なき二重価格は、自ら火に飛び込んでいるようなものだ。やはり、先ほども言ったように、妥当性を与えられるかが重要となるだろう。
まず考えられるのは「理由を可視化する」ことだ。例えば「観光客のスーツケースの車輪が汚れないよう頻繁に床を清掃するため」「従業員の英会話レッスン代に充てるため」といった説明があれば、気持ちよく払ってくれないだろうか。
インバウンド客に料金の上乗せ理由が伝わり、納得してもらえれば、ハレーションは起きにくい。反対に、説明なしに払わせてしまえば、だまし討ちのような印象を与えてしまい、反発を招く。
インバウンド向けの高価格商品を、別途用意するのも手だろう。問題は「同じ商品なのに、購入者によって価格差が生じる」ことだ。別の商品として売り出すのであれば問題ない。観光地ならば「特製ガイドマップ」をセットにしてもいいだろう。日本ならではの“おもてなし”を付加価値として提供できれば、正当な対価と認識してはくれないだろうか。
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