ここでリーダーが絶対にやってはいけないことがある。
「あれだけ不満を口にしていたのに、結局残るのか」
と、足元を見るような態度をとることだ。
確かに、散々不満を口にしていた社員が急に前向きになれば、「手のひら返しだ」と感じるかもしれない。だが、その感情を表に出してはいけない。なぜなら、相手の変化の芽を摘むことになるからだ。
ジョブハギングの社員は、最初は消極的な理由で残っている。「転職先がないから仕方なく」という状態だ。だが、そこから「この会社も悪くないかもしれない」と気持ちが変わるかもしれない。冒頭の女性社員がまさにそうだった。
その転機を潰すのが、上司の冷ややかな態度だ。
「どうせすぐ辞めるんだろう」
「転職先が見つかったら、また文句を言いだすに違いない」
このような空気を出した瞬間、社員の意欲は一気に萎える。せっかく「賢い生存戦略」をとろうとしているのに、「静かな退職」モードに逆戻りだ。
冒頭の女性社員のケースに戻ろう。彼女は転職活動がうまくいかず、消去法で現職に留まった。
「タイミングを逸した」
「まさかこんなに早く、AIが仕事を奪うなんて」
彼女はこう考えたかもしれない。だが、あるとき後輩から仕事の相談を受け、自分の経験が役に立つことに気付いた。
そこから姿勢が変わった。上司が「最近、頼りにしてるよ」と自然に声をかけたことで、さらに変化が加速したという。
本人もこう語っている。
「思っていたほど、この職場も悪くなかったです。部長も、もっと冷たい人だと思っていたんですが」
人は意外と単純である。認められれば嬉しい。頼りにされれば応えたくなる。「ラベリング効果(レッテル貼り)」という心理現象がある。先入観が強く「この職場は古い」「上司とは価値観が合わない」というラベルを貼れば、そのようにしか見えなくなる。しかし一度そのラベルがはがれてしまえば、
「部長って、こんなに私たちのこと気にしてたんだ」
「単に不器用なだけなのかも」
転職活動をしていたからこそ、「外」と比較して「内」の良さに気づけた面もある。
大事なのは、社員が主体的に貢献しようとする姿勢を見せたとき、その流れに乗せてあげることだ。過去の発言を蒸し返さず、今の行動を認める。それだけで、しがみつきは前向きな姿勢に変わっていくかもしれない。
逆にこの瞬間を逃してはいけない。変化の兆しが見えたときに何もしなければ、社員は「やっぱり誰も見ていないんだ」と感じ、再びエネルギーを失う。何事もタイミングが重要なのだ。
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