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CHROが“AI責任者”になる時代 「ITと人事の断絶」を打ち破る、新・組織論AI・DX時代に“勝てる組織”(1/3 ページ)

» 2026年03月06日 07時00分 公開
[小出翔ITmedia]

連載:AI・DX時代に“勝てる組織”

AI時代、事業が変われば組織も変わる。新規事業創出に伴う人材再配置やスキルベース組織への転換、全社でのAI活用の浸透など、DX推進を成功に導くために、組織・人材戦略や仕組み作りはますます重要になる。DX推進や組織変革を支援してきたGrowNexus小出翔氏が、変革を加速させるカギを探る。


 「AIに私たちの仕事は奪われるのか」

 生成AIがビジネスの現場を席巻して以来、多くのメディアでこの二元論的な問いが議論されています。

 実際、米国を中心とした巨大テック企業などでは、AI導入と業務効率化を見据えた採用抑制や、既存業務の代替に伴う人員整理(レイオフ)の動きが顕在化しており、「AIによる雇用の縮小」は現実のものとなっています。

 しかし、「何人分のコストを削減できるか」という表面的な発想にとらわれた企業は、早晩、成長の限界を迎えることになります。

 今、本質的に問われているのは「AIという新たな同僚(デジタルレイバー)の登場によって、人間の役割はどう変わり、人間が生み出す価値はどこへシフトするのか?」です。さらに、その不可逆で劇的な変化を組織としてどうマネジメントし、競争力の源泉へと転換していくのかという戦略的な問いでもあります。

 こうした過渡期において、世界の最前線をけん引する先進企業は、これまでの常識を覆すような大胆な組織変革に乗り出しています。

 本稿では、バイオテクノロジー企業の米Moderna(モデルナ)と米Microsoft(マイクロソフト)の人事戦略をひもときながら、「AI時代に勝てる組織」を提示していきます。

photo01 先進企業の事例を基に「AI時代に勝てる組織」の条件を探る(提供:ゲッティイメージズ、以下同)

なぜ日本のDXは頓挫するのか?

 先進企業の事例に触れる前に、まずは多くの日本企業が陥っている「構造的な病」について指摘しておかなければなりません。

 現在、日本企業の多くがDXや生成AIの全社導入に取り組んでいますが、「実証実験(PoC)の壁」を越えられず、一部の局所的な業務効率化にとどまるケースが少なくありません。なぜ、全社的な生産性向上やビジネスモデルの変革にまで至らないのでしょうか。

 そのボトルネックは、「テクノロジーを管轄するIT部門」と「人を管轄する人事部門」の深刻なサイロ化(縦割り・分断)にあります。

 多くの企業では、AIやシステムの導入は「IT部門」の管轄であり、彼らはセキュリティポリシーの策定やライセンスの配布、インフラ環境の整備に奔走しています。一方で、社員の採用、育成、評価、適材適所の配置は「人事部門」の管轄であり、従来通りのコンピテンシー評価や等級制度、前年踏襲型の要員計画(ヘッドカウント管理)を黙々と運用し続けています。

 AIを「単なる便利なソフトウェア」として捉えているうちは、この分業体制でも大きな問題にはならなかったかもしれません。しかし、自律的にタスクをこなし、推論し、アウトプットを出すAIエージェントは、もはやツールではなく「デジタルレイバー(デジタルの労働力)」です。

 新たな「労働力」が現場に大量に導入されたにもかかわらず、IT部門は「システムの稼働状況」しか見ず、人事部門は「人間の社員」しか見ない。

 「AIによって業務時間が半減した部門のメンバーを、どうリスキリングし、どの高付加価値業務に再配置するのか?」

 「AIを駆使して5人分の成果を出す若手社員を、旧来の年功型・職能型の人事制度でどう評価するのか?」

 こうした問いが、IT部門と人事部門の間にあるポッカリとした「責任の空白地帯」に落ちてしまっているのです。戦略が分断されたままでは、現場には「AIという名の高機能な箱」だけが置かれ、組織としての変革は一向に起きません。

 この「ITと人事の断絶」という課題に対し、参考になる事例がモデルナです。

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