「転勤に最大100万円」それでもなぜ解決しない? 企業が制度を見直す理由(4/5 ページ)

» 2026年03月13日 08時30分 公開

「転勤がない」ことが強みになる?

 サントリーHDは制度導入から約1年が経過し、従業員意識調査のスコアは上昇傾向にあるほか、もともと低水準の自己都合退職率も維持している。一方、配偶者のキャリアや介護といった個別事情にどこまで寄り添うか、ローテーション方針とのバランスは引き続き課題となりそうだ。

 2026年4月に、新制度の導入を控える東京海上日動では、採用活動の段階で「首都圏、地域ともに反応はよい」との感触を得ている。ただし、勤務地の希望が東京に集中すると、地域拠点の運営が難しくなるリスクもある。そのため、地域での採用を強化するとともに、地方拠点のやりがいあるポジションの魅力を社内に伝え、社員の応募を促す方針だ。

 しかし、こうした制度改革は、資金力のある大企業だからこそ実現できる側面が大きい。では、中小企業にとってこの潮流はどう映るのか。

 東京商工リサーチの調査(2025年)によると、転勤や配置転換の実績がある大企業は75.6%に上る一方、中小企業は32.3%にとどまる。柔軟な転勤制度の導入率にも大企業(31.1%)と中小企業(12.6%)で開きがある。

photo 転勤や配置転換の実績がある企業(東京商工リサーチの調査から引用)

 大手が制度の柔軟性を競い合うことで、採用市場全体の期待水準が上がっていく懸念はあるが、中小企業が同じ土俵で張り合うのは現実的ではない。むしろ、見方を変えれば、「転勤がない」ことが強みとなる。

 アプリ開発を手掛けるペンマーク(東京都目黒区)が、現役大学生611人を対象に実施した調査では、70.5%が就職先選びで「転勤の有無」を重視すると回答し、42.3%が「転勤がある企業への応募を避けた」経験があると答えた。転勤がないこと自体が魅力になることを示唆している。

photo 就職先を決める際に「転勤の有無を重視する」割合(ペンマークの調査から引用)
photo 「転勤がある企業への応募を避けた」経験がある割合(ペンマークの調査から引用)

 大手企業の制度拡充がニュースになる中で、「転勤なし」を採用ブランドとして発信できるかどうか。金銭で勝負するのではなく、働き方の構造そのものを武器に変える発想の転換が求められる。

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