1勝15敗で、なぜ生き残れたのか アキッパの「やめる」意思決定「撤退」の論理(1/4 ページ)

» 2026年03月21日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

「撤退」の論理:

リソースが限られる中小企業にとって、過去の投資や慣習に縛られた「やめられない」状態は致命傷になる。本特集では「何を捨て、何を守ったか」の実例を取材。地方企業のリアルな決断事例から、成果を最大化させるための「攻めの撤退」をひも解く。


 経営者は「やめる」という意思決定を、どのように行っているのだろうか。その事業に投じたお金、毎日少しずつ積み上げてきた時間、関わってきたたくさんの人。そうしたものが多ければ多いほど、手放すことよりも、「続けたほうがいいかも」といった考え方に偏りがちだ。

 そんな中で、あえて“やめる”を積み重ねてきた会社がある。駐車場シェアリングサービスを運営する「アキッパ」(大阪市)だ。これまでに立ち上げた事業は17。その多くをやめて、いまはほぼアキッパ一本に絞っている。

 駐車場シェアリングサービスとは、空いている月極駐車場や個人宅のスペースを、スマートフォンから予約して使えるサービスだ。コインパーキングのように現地で探すのではなく、「行く前に確保」できるので、仕事で利用しているビジネスパーソンも多い。オーナーは初期費用0円で始められ、空いている時間だけ貸し出して収入にできるのがメリットだ。

アキッパの仕組み(出典:アキッパ、以下同)
「停めたい」と「貸したい」をつなぐ

 サービスは全国に広がっていて、登録駐車場は約5万5000件、会員数は510万人を突破した(いずれも2025年12月末時点)。プロ野球やJリーグのスタジアム周辺、花火大会やフェスなど、「その日だけ極端に混む場所」での利用が増えているのも特徴だ。

 アキッパの売上高も、ここ数年でじわじわと伸びている。ちょっと前の数字になるが、2023年度の売上高は約26億円で、純利益は8597万円。長く続いた先行投資のフェーズを抜けて、初の黒字を実現した。スタートアップの中には一気に大きく伸びる会社もあるが、同社はそうではない。コツコツ積み上げてきたものが、ここにきて数字として見えてきた、というタイプである。

 派手さはないけれど、「あ、そこにあったのね」という気付きを積み重ねてきたサービスだ。言い換えると、なくても困らないが、あるとちゃんと助かる。そんな存在として、じわじわと広がっているのだ。

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