本稿は、3月19日にスマレジが開催した「お店の未来カンファレンス2026」を取材したもの。
米Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)が、日本でバーガーキングを展開するビーケージャパンホールディングスを800億円で買収した。かつては赤字に苦しみ、店舗閉鎖が相次いだバーガーキングが、なぜここまで評価を高めたのか。
その背景には、競合であるマクドナルドの後追い戦略から脱却し、独自の価値にリソースを集中させた経営判断があった。野村一裕代表取締役社長の話から、再建のプロセスをひもとく。
バーガーキングの日本進出の歴史は、平たんではなかった。1993年の初上陸以来、運営母体の交代や一時的な日本撤退を経て、2007年に再上陸。しかしその後も苦境は続き、野村社長が入社した2019年当時は、店舗数は77店舗まで落ち込んでいた。
当時、同社が最初に着手したのは、メニュー構成の抜本的な見直しだった。ここで障壁となったのは、フロリダ州マイアミにある米国本社の意向だった。
「本社からは、マクドナルドに対抗した低価格でサイズも小さめの『スモールバーガー』に注力するよう求められました。しかし、日本で後発ブランドである当社が同じ土俵で戦っても勝てません。本社はロイヤリティ最大化をKPIとする一方で、私たちの使命は、黒字化と持続的成長の実現です。目標に乖離(かいり)が生まれていました」
野村社長たちは本国の指示をあえて無視し、大型のハンバーガー「ワッパー」に注力する判断をした。
「マクドナルドより価格を抑える」といった追従型の戦略は取らないと決断。日本市場で生きる道は、スピードや安さではない。「ワッパー」や「直火焼き」といった特徴を軸に、独自のブランド体験を打ち出す方向へ舵を切った。
限られたマーケティング予算で、バーガーキングの独自性を発信する方法を模索する中、同社はSNSでの話題化に注目した。
その象徴的な事例が、2020年に秋葉原の店舗で掲示した「縦読み」ポスターだ。
近隣のマクドナルド店舗が閉店することを告げた大型ポスターを掲出しているのを見つけた同社は、模倣したデザインのポスターを制作。秋葉原を共に盛り上げてきたマクドナルドへの感謝を伝えるメッセージの中に、縦読みをすると「私たちの勝チ」となる仕掛けを施した。
このポスターは賛否両論を巻き起こしたが、SNSを中心に大きな話題を生んだことで、日本でのバーガーキングの存在を示すことになった。
この事例のポイントは、バーガーキングが自分たちで発信するのではなく、誰かが発見して投稿したくなるよう設計したことだ。自社が直接発信すれば炎上しかねないと考え、ユーザーによる発見という形にした。
また、2019年に下北沢に出店した際は「バーガーキング下北沢に作ってくれや」と過去に一般ユーザーがSNSに発信した投稿をそのまま拡大し、ポスターを制作。開店工事中の店舗の窓に貼り出した。
これらの事例に共通する話題化のためのメソッドを野村社長は「弱さを認め、素直になること」だと語る。
「下北沢には、既にマクドナルドもモスバーガーもあった。カレーなどの文化もある。そのため、私たちは『そんな中に参入して、誰がバーガーキングになんて振り向くの?』という着想からスタート。だからこそ『下北沢にバーガーキングを作ってくれ』という少数派の投稿を発見できました」
マクドナルドをはじめとする他社に「負けている」ことに素直に向き合い「自分たちがどこで負けているのか」「他社はどこが強いのか」を分析した上で、個性を生かす方法を考えることが勝ち筋だという。
「素直さ」と「泥臭さ」を前面に出すことで、後発ながらファンの心をつかむことに成功している。
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