では、この変化は日本の自治体にどのような影響を与えるのでしょうか。
記事の内容に当てはめて考えると「公務員がITツールを使って仕事をする」時代から「ソフトウェアが行政サービス(成果)を直接提供する」時代への大転換が起きるのではないかと考えられます。
この変化は、冒頭で示した2040年問題に対する解決策となり得ます。転換が進んだ場合、自治体の現場ではどのような変化が起きるのでしょうか。以下に、具体的な変化のイメージを整理します。
現在の自治体DXの多くは、紙をPDFにしたり、チャットボットを置いたりするCopilotの段階です。しかし、記事の理論にのっとると、ソフトウェアが「申請の受理から審査、決定、通知」までのプロセス全体を完結させます。
・これまで:住民がスマホで申請し、職員が裏側でシステムに入力・確認する
・これから:ソフトウェアが住民の属性と法規を照らし合わせ、自動で給付決定まで担う。職員は「例外的な判断」が必要なケースのみ対応する
日本の自治体は現在、膨大な業務(コールセンター、給付金処理、データ入力など)を民間企業に委託しています。これはまさに記事で指摘されている「20万円の人件費」の部分です。
考えられる変化としては、数億円かけて数百人のスタッフを雇う代わりに、それと同じ「成果」を出す高度なAIソフトウェアを導入する可能性があります。つまり「人件費・委託費」という名目の予算が「ソフトウェア利用料」(成果連動型)にシフトしていきます。
自治体業務は以下の2つに明確に区別することができます。
Intelligence(知能)
Judgement(判断)
例えば、住民の困りごとを聞き、どの制度が適用できるか判断して手続きを終えるまではAIが担い、人間は「その住民に寄り添う心のケア」や「地域の未来を作る議論」に集中することになります。
こうしたAI主導のサービス提供が進むと、自治体ごとに独自のシステムを開発する必要がなくなります。
「最も優れた行政サービスAI」を提供するスタートアップが登場し、多くの自治体がその「サービス」(ソフトウェア)を採用するようになります。
そのメリットとして、人手不足の小規模自治体でも、大都市並みの高度な行政サービスを維持できるようになります。一方、課題としては「ソフトウェアの選定能力」が自治体の格差を生む恐れがあること。また、AIが「判断」を誤った際の法的責任の所在(ガバナンス)が論点になります。
日本の自治体にとって、この考え方は単なる効率化ではなく「職員数が減少しても行政機能が止まらないための生存戦略」です。
これまで「人」が付加価値だと思われていた行政手続きが「ソフトウェアによる正確で迅速な成果」に置き換わることで、公務員はより人間にしかできない「福祉の現場」や「対話」へと回帰していくことになります。
「自治体DX」という言葉が出てきた2020年頃には「デジタル技術を使った業務効率化をすることで、職員(人間)でしかできない業務に厚みを持たせる」という議論がありました。しかし、この時点では実現に至るまでの要素技術がそろっているとは言えない状態であり、遠い目標のような捉え方をしていたように思います。
しかし、わずか数年で生成AIがここまで身近な存在となったことを踏まえると、今後5年、10年先には、こうした未来が現実になる可能性を十分に視野に入れておくべきだと思います。
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