川口弘行合同会社代表社員。芝浦工業大学大学院博士(後期)課程修了。博士(工学)。2009年高知県CIO補佐官に着任して以来、省庁、地方自治体のデジタル化に関わる。
2016年、佐賀県情報企画監として在任中に開発したファイル無害化システム「サニタイザー」が全国の自治体に採用され、任期満了後に事業化、約700団体で使用されている。
2023年、公共機関の調達事務を生成型AIで支援するサービス「プロキュアテック」を開始。公共機関の調達事務をデジタル、アナログの両輪でサポートしている。
現在は、全国のいくつかの自治体のCIO補佐官、アドバイザーとして活動中。総務省地域情報化アドバイザー。公式Webサイト:川口弘行合同会社、公式X:@kawaguchi_com
こんにちは。「全国の自治体が抱える潜在的な課題を解決すべく、職員が自ら動けるような環境をデジタル技術で整備していく」ことを目指している川口弘行です。
「2040年問題」という言葉をご存知でしょうか。これは、2040年頃に日本社会が直面するとされる重大な課題を表しています。
具体的には、日本国内で人口が減少し続ける一方で高齢者が増え、それに伴って自治体の税収は減少し、働き手も不足します。その結果、これまで通り行政サービスを提供し続けることが難しくなるという問題です。
日本の総人口は2008年にピークを迎えてから減少傾向に入り、2040年頃には毎年およそ100万人ものペースで減っていくと予測されています。また、内閣府の「令和7年版高齢社会白書」によると、高齢者(65歳以上)の人口は2043年に約3953万人でピークを迎える見込みです。
特に大都市圏では高齢化の進行が速く、一方で地方では人口減少と、それに伴う働き手・担い手の不足がより深刻になる傾向があります。
このように、2040年問題は全国の自治体が今後避けては通れない、大きな社会的課題となっています。
今回は2040年問題を前にして、AI技術がどのように社会に浸透し、自治体を変えていくのかについて考えてみましょう。
2040年問題のような構造的制約の中で、行政サービスの提供方法そのものを問い直す手がかりとして、AI時代の産業構造を示した興味深い論考があります。
数多くの有望スタートアップへの投資実績を持つ著名ベンチャーキャピタルである米Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)のジュリアン・ベック氏による記事「Services: The New Software」です。
この記事では、AI技術が実用的になった未来の産業や社会動向について「次の1兆ドル企業は、サービス企業に擬態したソフトウェア企業になる」という予測をしています。
これはどういう意味なのか。記事内で説明していることを、筆者の補足を入れながら紹介します。
これまでのソフトウェア(SaaSなどのクラウドサービスを含む)は、人間が業務を実行するための「道具」を提供するビジネスでした。しかし、AIの進化によって「道具」を売るのではなく「仕事そのもの」(アウトカム)を直接提供する存在へとソフトウェアは変化しつつあります。
つまり、以下のように変わるということです。
記事では、AIツールの役割を2つの段階に分けて説明しています。
AIができることと、人間に残るものを明確に区別しています。
新しいAI企業がどのように現在の社会に浸透していくのか、その戦術を示しています。
従来のSaaS企業は「ユーザー数(ID数)×単価」という料金体系を採用していますが、AIが業務を代替して人間の介在が不要になると、そのビジネスモデル自体が成り立たなくなるリスクがあります。
一方、新しいAI企業は最初から「成果報酬型」の課金モデルを採用できるため、既存のSaaS事業者が進出しづらかった、人件費のかたまりである「サービス市場」を一気に取り込める可能性があります。
つまり、この記事は「AI時代の勝者は、ソフトウェアの役割を単なる便利なツールの提供ではなく、法律・会計・カスタマーサービスといった『サービス産業』として再定義し、人間の介在なしに業務を完結させる企業である」と結論づけています。
従来「ソフトウェア市場」と考えられていた枠組みを大きく超え、膨大な「人件費・サービス市場」そのものがテック企業の新たなターゲットになった、という極めて重要な指摘だと考えます。
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