多様なデジタル人材育成の施策を展開するダイハツ。その施策をリードする太古氏には、一貫した哲学がある。それを象徴するのが「砂漠に種をまく」という比喩だ。
「いきなりトップダウンで『砂漠に大きな木を植えろ=大きなシステムを入れろ』と言っても、まず枯れてしまいます。そうではなく、私は砂漠の色々なところに種をまいているんです。多くの種は、芽吹かないかもしれません。でも、もし芽が出たものがあれば、それを大きな木になるよう大切に育てていきます」
いきなり大きなテーマを掲げても、うまくいくとは限らない。そうではなく、さまざまな施策を試み、可能性を探っていく。この地道なアプローチが、前述した数々のプログラムの背景にある。
「まずやってみようというところから始めて、小さな成功体験を積み重ねることが大事だと思っています」と太古氏。「壮大なテーマでなくてもいい。現場の困りごとに寄り添って、小さくても成果を出す。そうすれば『次もやろう』という気持ちが自然と生まれてきます」
こうした多様な施策と人材定着の工夫が実を結び、2025年10月、ダイハツは2025年度末を目標としていた「DX人材1000人」を前倒しで達成した。ここで言うDX人材とは、単にツールが使えるだけではない。デジタルを使って業務の改善や改革ができ、その成果を発表し、相応のスキルを持つと認定された人材を指す。次の目標は、2027年度までに3000人だ。
「1000人は、各部署に2〜3人ずつ配置することを想定した人数です。次に目指す3000人は、それぞれの現場で課題を見つけて、自分たちで自走できる体制を作るための人数。部署ごとに小さな組織ができて、自律的にDXを進められる状態を目指しています」
次の目標達成に向けて、太古氏が力を入れているのが「発信」だ。「同じことをやりたいと思っていたり、課題を抱えていたりしている人が、すぐ隣にいるかもしれない。それに気付かないのは、もったいないですよね。だからこそ、良い事例や、頑張っている人を見つけてつなげていく必要があります」
ただ発信するのではなく、「届け方」にもこだわっている。社内報やメール、社内サイトなど、どのチャネルからどの層に届くかを分析し、戦略的に届けている。発信を専門に担うエバンジェリスト役の担当者も配置した。
多様な学習機会を用意し、現場の困りごとに寄り添いながら小さな成功体験を積み重ねていく──。太古氏が語る「砂漠に種をまく」というアプローチは、遠回りに見えて、実は着実にDX人材を増やしていく「王道」なのかもしれない。
女性駅員がデジタル人材に転身 JR西、コロナ禍の“危機感”から始まった全社DXの舞台裏
「仕事は楽な方がいい」 ワイン一筋から「デジタル人材」に大変身 キリンDX道場でベテラン社員が学んだこと
きっかけは「やばくないですか?」の一言 アトレのAI活用リーダーが語る、全社を巻き込むコツ
たかが数分、されど数分 接客の大敵「待ち時間」をファンケルはどう解決した?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング