やることリストを計画から分離したら、計画には何が残るのでしょうか?
以下は、ある自治体の情報化計画の目次です。これまでの計画では、このような構成が多く見られました。
第1章:本計画の概要(目的、位置付け、計画期間)
第2章:情報化の動向(国、都道府県、当該自治体、社会の動向)
第3章:情報化アンケートの結果と課題(市民アンケートの結果とそこから導き出される課題)
第4章:計画の基本理念と基本方針(スローガンのようなもの)
第5章:情報化施策(やることリスト)
第6章:計画の進め方(推進体制、進行管理)
単純にここから第5章のやることリストを外すだけでは不十分です。工夫が必要です。
第1章「本計画の概要」は計画全体の導入部分であり、ここで特別な独自性や工夫を求める必要はないため、現状のままでも問題ないでしょう。
第2章「動向」と第3章「アンケートの結果と課題」は、計画策定の根拠や理由をファクトに基づいて示す章です。筆者は、第2章や第3章がなくても計画そのものは成立し得ると考えていますが、現状認識のズレを最小限に抑えるためにも、一定の事実や背景を示すことには意味があります。
ただし、第2章で示す「動向」や第3章の「アンケート」結果が、単なる自己満足や形式的なものになっていないかには十分注意が必要です。
特に注意が必要なのは第4章「計画の基本理念と基本方針」です。
本来であれば、第3章までの客観的事実や課題認識を受けて「私たちはどうなりたいのか」という理想像をしっかり明文化するパートとなるべきです。しかし、多くの自治体の情報化計画の策定プロセスを見ていると、実際には第5章の「やることリスト」が先に作られ、その説明や正当化のための「キャッチフレーズ」として、第4章が後付けで生み出されている例が少なくありません。つまり、本来あるべき流れと順序が逆転してしまっているのです。
今回は第5章の「やることリスト」を切り離すことにしたため、後付けで第4章の策定はできません。第2章、第3章で挙げた内容が実情とズレていないか、漏れがないか、またそれらを踏まえてしっかりと理想像を描けているかなど、不安を感じるかもしれません。しかし、まずは過去の情報化計画による成果や浮かび上がった課題を丁寧に振り返り、現状を正確に見極めることが何より大切だと考えています。
越谷市の場合も、これまでの取り組みの反省や調査結果、そして職員からのアンケートなどから、自分たちが目指したい姿を言語化することに苦心しました。ただ、実際にやっていて分かったことは「『良くなりたい、幸せになりたい』という理想像は、人によってそんなにブレることがない」という事実です。言い換えると、全員にとって「良い」と感じる状態を表現するために、表現の抽象度は高くせざるを得ないということなのかもしれません。
越谷市では、これを「ビジョン」と位置付けています。単なるスローガンではなく、誰もが同じ理想像を思い描き、心から納得できるものでなければ、計画に基づいた主体的な行動は生まれないのです。
そして第6章「計画の進め方」にも工夫を凝らしました。他の自治体の「計画の進め方」は、実施体制図やスケジュールなどが記されていることが一般的ですが、越谷市の場合はそれに加えて、企画発意の仕方(「改善したい」という声の上げ方)、意思決定の仕方、取り組みの評価の仕方、見直しの仕方、そして計画そのものの見直しの仕方など、計画を遂行するための方法を決めるようにしたのです。
このような工夫は、他の自治体ではあまり見られないかもしれません。というのも、庁内の事務手続きの方法というものは、その自治体にとっては当然のことであり、あえて計画に明記する必要はないと考えられがちだからです。しかし、計画を円滑かつ効果的に運用するためには、その「当たり前」を職員が迷わず実践できるようにすることも重要です。
実際には、庁内の事務手続きに関して十分な教育を受けていない職員もおり、そのために手続きの質に個人差が生まれることもあります。こうしたバラツキを防ぐことも、計画に手続きの進め方を盛り込んだ理由の一つです。
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