社員個人への影響も大きい。40〜50代で早期退職を選ぶ人の中には、退職金を「軍資金」として次のキャリアに踏み出す人も少なくなかった。退職金で住宅ローンを完済し、残りを独立や起業の元手にする。そういった資金計画を前提にセカンドキャリアを考えていた人にとって、退職金の縮小は大きな打撃だ。
しかし、これからは退職金に頼らない前提で人生設計を組み直すしかない。その分、月給が上がっているのであれば、自分で貯蓄し、自分で資産運用をする。NISAやiDeCoといった制度を活用しながら、自律的に資産を形成していくことが求められる。
若い世代にとっては、むしろポジティブな変化かもしれない。金額が見えにくい将来の約束より、今手元に入る報酬の方が明確で、自分でコントロールできる。資産運用のリテラシーさえあれば、退職金がなくても十分に備えられる時代だ。
退職一時金の廃止は、一つの制度変更にとどまらない。終身雇用という日本型雇用モデルが本格的に終わりを迎えつつあることを象徴している。
会社が社員の人生を丸ごと保証する前提は変わりつつある。年金も退職金も、かつてのように企業が手厚く面倒を見てくれる時代ではなくなってきた。国の年金制度も将来的に給付水準が下がる可能性が指摘されている中で、かつてのように会社や国に頼り切ることは難しくなっている。
だからこそ、自分のキャリアと資産は自分で守る。シニアも若者も、そうした意識が必要な時代になりつつある。
人事担当者にとっては、退職金制度の見直しを「コスト削減」や「トレンドへの追随」としてではなく、自社の人材戦略全体の再設計として捉えるべきだろう。メンバーシップ型を続けるのか、ジョブ型に移行するのか。その判断次第で、退職金制度の最適解は変わってくる。
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