サントリーがジンの商品化に踏み切ったのは、今から90年ほど前。創業者・鳥井信治郎氏の「日本人の味覚に合う洋酒を作り、文化を育みたい」という思いから開発した「ヘルメスドライジン」を1936年に発売したのが始まりだ。それ以降も、「サントリードライジン」などの商品を展開し、1980年代には積極的にマーケティングを仕掛けた。
同社によると、世界のジン市場は2015年から10年で約2倍に成長し、2兆円規模となった。この流れの中で、サントリーは2017年にジャパニーズクラフトジンと銘打った「ROKU<六>」(以下、ROKU)、2020年に「翠(SUI)」(以下、翠)を発売するなど、矢継ぎ早に商品を投入してきた。
ROKUは洋酒であるジンに、桜葉、煎茶、山椒といった日本ならではの素材を組み合わせるとともに、そのストーリーを伝えたことで大ヒット。中高価格帯のジンにおいて、他銘柄が前年比115%だったのに対し、ROKUは同144%と突出した成長を見せた(2024〜25年の金額ベース、インテージSRI+調べ)。
世界でも高い評価を受けている。サントリーによると2024年末時点で、プレミアムジンの販売数量は世界2位に。品質面でも、2025年に国際的なコンペであるISC(International Spirits Challenge)にて、ジン部門の最高賞を受賞した。
ジンの国内市場も好調で、2020年から2025年にかけて約3.5倍に拡大した。特に大きく伸びたのが2022年だ。前年まで100億円規模だった市場が、200億円規模まで急拡大した。
このタイミングで発売されたのが、翠ジンソーダ缶である。これは2020年に先行して発売された瓶入りのジン「翠」から派生した商品だ。
翠ジンソーダ缶では、ジンの特徴である香りを缶でも楽しめるよう、原酒の配合を見直した。缶は飲み口が小さく、瓶に比べて香りを感じにくいためだ。さらに、「食中酒」として楽しめる点を前面に打ち出したことで、多くの支持を得ることに成功した。
翠ジンソーダ缶は、2016年以降に発売されたサントリー商品の中で、初週売り上げの最高記録を更新。あまりの人気ぶりに、サントリーは発売直後に年間販売計画を引き上げたほどだ。翠ジンソーダ缶はサントリーを代表する商品の1つとなり、2009年発売の「角ハイボール缶」を大きく上回るペースで売り上げを伸ばした。
2024年12月にサントリーがジンの飲用実態を調べたところ、年代別で最も飲用率が高いのは20代で17.6%だった。最も低い60代の4.6%と比べると、4倍近い数値で、翠ジンソーダ缶についても同様の傾向が見られた。翠のメインターゲットは20〜40代で、特に「酒離れ」が叫ばれる若年層の支持を得ながら、ジン市場の拡大をけん引してきたことが分かる。
サントリーによると、今や翠はスタンダード価格帯の国内ジン市場で7割を占めるまでに成長した。翠ジンソーダ缶について、マーケティング本部副本部長兼ウイスキー部長の梅原武士氏は「ハイボール、レモンサワーに次ぐ第3のソーダ割として支持が広がっている」と手応えを語る。
しかし、好調の裏で課題も浮かび上がっている。2025年度の翠ブランドの業務用売り上げは前年比26%増と大幅に伸びた一方、缶の売り上げが大半を占める家庭用は9%減となった。2025年末時点で取扱店数は3万店を突破し、2026年は3.5万店を目指すなど、消費者との接点は広がっている一方で、家庭での消費には十分に結び付いていないのが現状だ。
こうした課題について梅原氏は、「RTD飲料(アルコール缶飲料)の選択肢は、昔に比べてはるかに多様になった。当社の商品だけでも、チューハイやレモンサワーなどに加えて、近年はノンアルコール商品も増えている。ニーズも多様化する中で、翠ジンソーダ缶がやや埋没してしまったことが原因だと考えている」と説明する。
サントリーはこの状況を打開するため、新たに3つの戦略を採用する。
1つは価格だ。350ミリリットル缶の希望小売価格を従来の212円から196円に引き下げる。
これまで翠ジンソーダ缶は「他の缶チューハイより高い」「店ではよく飲むが、家庭用としては手が出しにくい」といった声が出ていた。競合商品ではアサヒビールの「アサヒGINON(ジノン)」が好調で、価格も168円と安価だ。梅原氏は「翠とジノンでは客層が異なり、同じ土俵で戦っている商品ではない」と語るが、消費者に手に取ってもらうためには、価格を意識せざるを得ないのは確かだろう。
また、2026年10月には酒税法改正によりビールとの価格差も縮まるため、価格は非常に重要な要素だ。
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