似たような出来事は、ビジネスの現場でもよく見られます。
例えば、チームのAさんのパフォーマンスが、ここ数カ月で明らかに落ちていたとします。上司は「最近やる気がないんじゃないか」と感じ、1on1で「もっと主体的に動いてほしい」と伝えました。Aさんは「分かりました」と言いますが、その後しばらく様子を見ていても、状況が改善される様子はありません。
別部署のBさんから話を聞くと、Aさんはその部署との連携業務で行き詰まっていたことが分かりました。誰に相談すればいいか分からず、「こんなことを言えば、評価が下がるかも」と思い、上司に打ち明けられなかったのです。
上司が感じた「パフォーマンスが落ちている」は事実です。しかし「やる気の問題だ」と捉えたのは、あくまで上司の解釈。本当の課題は「本人の意欲」ではなく、「相談しづらい環境」にあったのかもしれません。
「事実」と「解釈」は別物です。「パフォーマンスが落ちた」は事実。「やる気がない」は解釈です。この2つを混同したまま課題を定義してしまうと、本来解く必要がない問題に時間を使ってしまうことになります。
『怪物』でも似た構図が描かれています。物語の中盤、担任教師は、子どもたちをめぐる出来事について、自分が見えていたものだけで判断していたことに気付きます。それまで「問題」だと思っていたことが、別の視点から見ると全く違う意味を持っていたのです。
「自分の前提が間違っているかもしれない」と考えることは、簡単ではありません。頭では理解していても、人はつい、自分が最初に見た景色や、自分にとって自然な解釈を「正しいもの」として扱ってしまいます。
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