ここまで見てきた変化は、富裕層向けカードの「象徴」そのものを書き換えるものだ。ステータスカードの価値は、長らく年会費の高さで測られてきた。10万円台の年会費を払うこと自体が、顧客の社会的地位を示すサインだったわけだ。Olive Infiniteは、そこに別の価値基準を重ねた。「9万9000円を払う人」ではなく、「5000万円以上を預ける人」が最上位顧客である、と。
カード会社にとっての競争軸は、年会費の高さから始まり、決済額の多さへと広がり、いま預かり資産の規模へと移りつつある。Visa InfiniteとOlive Infiniteは、その分岐点に置かれた商品だ。
もっとも、この設計は誰でも真似できるわけではない。銀行、カード、証券を同一グループで束ねられる会社は限られる。Olive Infiniteは、SMBCグループの構造そのものを武器化した商品でもある。
次に問われるのは、5000万円を預けた富裕層に対して、どこまで継続的に価値を提供できるかだ。初年度の目玉企画や会員専用イベントは、最初の「驚き」を与えるには十分だろう。
しかし富裕層は飽きやすい。年間50回のイベントを続ける中で、希少性をどう維持するか。デジタル富裕層を巡る競争の本番は、商品を投入したいまではなく、サービスが定着し始める数年後にやって来る。
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
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