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「ジョブ型人事」はもう古いのか Google、富士通、テルモらが実践する「スキルベース組織」の衝撃AI・DX時代に“勝てる組織”(1/3 ページ)

» 2026年05月29日 07時00分 公開
[小出翔ITmedia]

この記事は、小出翔氏の著書『誰もが成長し活躍する会社のしくみ 「スキルベース組織」という新しい人材マネジメントの実践法』(プレジデント社、2026年)の内容を基に再構成したもの。


連載:AI・DX時代に“勝てる組織”

AI時代、事業が変われば組織も変わる。新規事業創出に伴う人材再配置やスキルベース組織への転換、全社でのAI活用の浸透など、DX推進を成功に導くために、組織・人材戦略や仕組みづくりがますます重要になる。DX推進や組織変革を支援してきたGrowNexusの小出翔氏が、変革を加速させるカギを探る。


 日本企業の多くはこれまで、採用において「メンバーシップ型」と呼ばれる仕組みを活用してきました。これは新卒を一括で採用し、職務(ジョブ)を明確に限定せず、さまざまな部署を経験させながら長期的に育成する方法です。

 パナソニックの創業者・松下幸之助氏が「事業は人なり」と述べたように、人を大切に育て、組織への帰属意識とチームワークで勝つという考え方は、高度経済成長期における日本の競争力の源泉でした。

 しかし、市場や技術の変化が激しくなり、高度な専門性が求められる現代においては、メンバーシップ型の限界が露呈しています。「何を専門としているのか」「どんなスキルを持っているのか」が曖昧(あいまい)になりがちで、適材適所の配置や、個人の専門性に対する正当な評価が難しくなっています。

 この状況を打破すべく、近年「ジョブ型」マネジメントを導入する企業も増えています。「ジョブ型」とは、職務の内容や責任範囲を「職務記述書」(ジョブディスクリプション)で明確に定義し、その職務を遂行できる人材を配置する考え方です。しかし、ここにも大きな落とし穴がありました。

 「ジョブ」(職務)という単位は、変化の激しい現代においては硬直的です。導入時に詳細な職務記述書を作成しても、半年後には現状と乖離(かいり)しているかもしれません。また、職務を厳密に定義し過ぎると「これは私の仕事ではありません」というセクショナリズムが生まれたり、部署を横断する人材配置が難しくなったりと、かえって組織の柔軟性を損ねてしまうケースも散見されます。

 なお、ジョブ型雇用が広く浸透している米国では、すでに1990年代に「ジョブ型の終焉(しゅうえん)や限界が指摘されていた」という事実があります。経営書『ジョブシフト』(原題:Job Shift、ウィリアム・ブリッジズ著、1994年)では「仕事の単位としてのジョブの終焉」という考え方が提示されており、ジョブ型は本質的に環境変化への対応力が弱く、必ずしも今の時代にフィットしないのではないか、と指摘されていました。

 一方で、日本ではあたかもジョブ型が魔法の解決策のように扱われている――そのギャップに戸惑いを感じています。

 メンバーシップ型では曖昧すぎて、ジョブ型では硬直的すぎる。私たちは、この難局をどう乗り越えればよいのでしょうか。

photo01 「メンバーシップ型」でも「ジョブ型」でもない、新しい人材マネジメントとは(提供:ゲッティイメージズ、以下同)

ジョブではなく「スキル」を基準にするという新しい発想

 その答えが「スキルベース組織」(Skills-based Organization)という新しいアプローチです。これは、人材マネジメントの基準を「人」そのもの(メンバーシップ型)や、硬直的な「職務」(ジョブ型)に置くのではなく、より柔軟で可視化しやすい「スキル」に置くという考え方です。

 この「スキルベース組織」という言葉を、初めて耳にする方も多いかもしれません。しかし、これは決して机上の空論ではなく、今、世界中で急速に広がりつつある人材マネジメントの大きな潮流です。特に米国のHR(人事)分野において注目を集めている概念の一つです。

 変化への対応力と組織の機動性を高めるため、多くの先進企業がすでにこのアプローチを取り入れています。

 例えば、グローバル消費財メーカーの英Unilever(ユニリーバ)では、業務をプロジェクトやタスク単位に細分化し、社員は自身の持つスキルに基づいて、部門を越えて柔軟に配置される仕組みを導入しています。

 米Googleでは、多様なスキルを持つ社員が異なる部署でも活躍できるよう、プロジェクトベースでスキルを発揮できる体制を早期から整えてきました。また、米IBMは、体系的なスキル開発プログラムを提供し、社員がスキルセットに応じてキャリアを選択できる環境を整備しています。

 この波は、日本にも確実に押し寄せています。富士通やKDDI、さらには後ほど詳しく紹介するテルモといった先進的な日本企業も、従来の制度の限界を打破すべく、スキルを基軸とした人材マネジメントへの変革に着手し始めています。

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