オフィス家具大手のイトーキは6月11日、本社12階フロア(約2700平方メートル)を4年ぶりにリニューアルしたと発表した。これまでのオフィスリニューアルの「作って完成」というやり方ではなく、オフィス利用に関するさまざまなデータを収集、分析し、その時の働き方に最適な環境に「チューンナップ」し続けるオフィスを目指す。
出社が前提の働き方からコロナ禍でのリモートワークを経て、再び出社回帰の流れが強まっている。同社が全国5296人のオフィスワーカーに実施した調査によると、67.5%が「リモートワークを行っていない」と回答した。
ビジネスパーソンがオフィスに戻ったことで、新しい課題も生まれている。その一つがオフィスの混雑だ。コロナ禍でオフィスを縮小した企業も多い中、人員増加や出社率の上昇によるオフィスの混雑は、生産性や働きやすさにマイナスな影響を与えかねない。
一方、オフィスビルの空室率低下や賃料の上昇により、コストの観点からオフィスフロアの拡張や移転を決断できない企業は少なくない。既存のオフィスフロアをいかに有効活用するかは、重要な経営課題だ。
イトーキの本社では、2021年から2026年にかけて在籍人数が850人から1300人へと約1.5倍に増加した。出社率も40%から70%へと高まった結果、1人当たりのオフィス面積は8.5平米から5.5平米へと約35%縮小している。
通常であれば「手狭になった」「働きにくい」と従業員の不満が増加し、満足度が低下する状況だ。しかし同社が実施した調査によると、従業員エンゲージメントは2021年の56.2%から2025年は81.9%へと向上。オフィスの温湿度や空気、光、音、家具などの快適性の総合指標である「オフィス快適性」は73.2ポイント、「オフィスで生産性高く働けていると思う」 と回答した割合である「生産性実感」は80.0ポイント(いずれも2025年時点)と高水準を記録した。
人員増加に伴い、オフィスが年々手狭になる中、イトーキはなぜ従業員体験を向上できているのか。その背景にあるのが、データ分析とAI活用の両軸によるオフィス作りだ。
これまでのオフィス作りでは、従業員アンケートで要望を集め、予算の範囲内でそれを最大公約数的に満たすやり方が主流だった。しかし、このやり方では従業員の満足度は上がっても、業績や成果に必ずしも結び付かなかったという。
そこでイトーキは「能力を発揮できているか」という視点からオフィスを評価し、見直す方針へとシフトした。高い能力を発揮している従業員、あるいは能力を発揮する力(以下、能力発揮度)が大きく向上した従業員が、オフィスの「どこで」「どのように」働いていたのかが分かるデータを収集し、分析した。
その結果、2021〜2023年と、2025年では能力発揮度に明確な変化があった。2021〜2023年は、集中できる席などで自律的にソロワークを行う従業員の能力発揮度が高かった。しかし、2025年のデータでは傾向が一変。オープンエリアやコラボレーションスペースなど、他者とコミュニケーションを取りやすい場所を利用する従業員の方が、能力発揮度の向上率が高いという結果が出たのだ。
複雑化するビジネス環境下においては、ソロワークだけでなく、チームで時間と場所を共有する「チームコワーク」が、心理的安全性やコミュニケーションの質を高め、結果として個人の能力発揮に直結することが分かった。
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