千葉県印西市はなぜ「データセンターの聖地」になったのか Google、Microsoftを呼び込んだ半世紀前の“読み違い”古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

» 2026年06月22日 06時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

筆者プロフィール:古田拓也 株式会社X Capital 1級FP技能士

FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経てX Capital株式会社へ参画。


 東京都心から北東へおよそ40キロメートルにある千葉県印西市。かつて「千葉ニュータウン」として開発されたこの郊外の街が、いま世界の巨大IT企業にとって“聖地”になっている。

 米Googleは2023年4月、日本国内初となる大規模データセンター(以下DC)を開設した。米Amazonのクラウド部門であるAmazon Web Services(AWS)も拠点を展開し、クラウドサービス「Microsoft Azure」の接続拠点まで集まっている。その数はすでに約30棟で、今後も10棟以上の建設が予定されている。

※参照:日経電子版「『データセンター銀座』千葉・印西市、新設続く 駅前計画に反発も」(2025年12月26日)

 「DC銀座」とも呼ばれる印西市に、なぜこれほどテック巨人のDCが集中するのか。背景を分析すると、AIブームを支えるDCの“ボトルネック”が見えてきた。

dc 印西市になぜDCが集まっているのか(提供:ゲッティイメージズ)

「地盤の強さ」という地味で決定的な条件

 DCは、24時間365日止められないサーバーの集合体だ。精密機器の塊であり、揺れと停電に弱い。そのため、立地選びの最優先事項が「災害に強いこと」であり、地震大国の日本にとって印西市は希少な良立地なのである。

 印西市の大部分は、千葉県北部の下総台地に位置する。この付近には活断層がなく、地震のリスクが低いとされる。地盤も盤石で地震の揺れが伝わりにくく、被害が少ない傾向にある。

 加えて標高20〜30メートルの下総台地の上に位置し、海岸線から20キロメートル以上離れている。そのため津波はもちろん、利根川の流域近辺を除けば、川の氾濫といった水害のリスクも低い。

半世紀前の“読み違い”がDC銀座を作った

 印西市の千葉ニュータウンは1970年代から計画的に開発された街で、平らに整地された大規模な用地だ。GoogleがDC建設に当たり取得した区画は、同一開発工区で16万平方メートル規模に及ぶ。都心では到底確保できない広さだ。

※参照:SCSK(東京都江東区)netXDCコラム「印西が『データセンター銀座』と呼ばれる歴史的背景と立地要件」

 加えて、見落とされがちな最大の利点が、電力インフラの遺産である。千葉ニュータウンは当初、いまよりはるかに多い人口を見込んで開発された。ところが実際の人口は計画に届かず、結果として東京電力が敷いた大規模な送配電網が、街の規模に対して過剰となっていたのだ。この余剰の電力網こそが、電気を大量に使用するDCを引き寄せた。

 さらに1970年代の計画都市らしく、電力・通信・上下水道のケーブルや管が地下の共同溝にまとめて収容されており、増設や保守がしやすい状態だった。皮肉なことに、半世紀前の“読み違い”が、AI時代の最良の受け皿になった。

 立地のバランスの良さもある。千葉ニュータウン中央駅から成田国際空港へは最短で20分ほど。また、都心とも数十キロメートル程度しか離れていないため、通信速度が重視される金融機関や企業システムとも、通信の遅延が抑制された状態でつながる。

 集積はさらなる集積を呼ぶ。通信回線、電力、保守人材、関連事業者が一帯にそろうと、後から進出する企業にとっても効率がいい。1社が来れば次が来るという集積の経済、つまり「雪だるま式」に印西市がDCの一大拠点へと育っていったわけだ。

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