フジクラに非がないわけではない。保守的な見通しを出すこと自体は正しかったとしても、それは「情報開示」として正しいだけで、市場の対話としては改善の余地が大いにあったと評価できる。
大きな成長期待を背負った株価に対し、「純利益1%減」というメッセージを十分な説明なしに発信すれば、投資家から大きな落胆を招くのは半ば必然だ。「需要は旺盛だが、ボトルネックは水素という供給制約にあり、それが払拭されれば大きな上振れ余地がある」という説明が十分に伝えられていれば、株価が半値になるところまではいかなかったかもしれない。
一方で、市場参加者の「脊髄反射的」な取引傾向も褒められた話ではない。コンセンサスとの差分だけを秒速で売買するアルゴリズムと、見出しに反応する個人。この市場の構造が振れ幅を増幅してしまう。
とはいえ、この問題の原因を投資家個々人の愚かさのみに帰すのも酷だ。経営陣が「下限」しか約束せず、上振れ余地が検証不能なら、まず売って身を守るのは、リスク管理として合理的だからだ。
最後に、業績予想という様式そのものにも問題があると考える。
業績予想という1つの数字が、確率的な分布を表すことはできない。米国企業などでは、業績予想をレンジ(幅)で示すケースが多いが、日本においてそのような開示がなされることは限定的だ。前提条件の明示、複数シナリオの提示が丁寧でなければ、不確実性の高いマクロ環境においては株価の乱高下がいたるところの銘柄で発生するだろう。
東京証券取引所が情報開示における改革を進めるいま、次に問われるべきは、業績予想を1つの数字ありきの運用からレンジを前提としたものに改善できるかどうかだ。フジクラの一件は、その改革の必要性を相場の乱高下という形で突きつけたというべきではないか。
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