クレジットカード決済サービスを手掛ける全東信(大阪市)は7月6日、大阪地裁へ準自己破産を申請し、同日に破産手続き開始決定を受けた。負債額は約1151億円と、今年最高額となった。同社は、なぜこれほどの巨額破綻に至ったのか。
全東信の主力事業は、飲食店を中心としたクレジットカード加盟店向けの「先行入金サービス」である。クレジットカード会社から売上金が入金される前に、全東信が立て替えて加盟店に先行入金する仕組みだ。帝国データバンクによると、2020年3月期(2019年4月1日〜2020年3月31日)の年間収入高は約80億円となっていたという。
しかしその直後、同社は大打撃を受ける。新型コロナウイルスまん延による緊急事態宣言や営業自粛要請が、同社の主要顧客である飲食店を直撃。その結果、2021年3月期(2020年4月1日〜2021年3月31日)の年収入高は約50億円へ急減し、2期連続で赤字となっていた。
さらに2024年1月には、通常であればクレジットカード加盟店契約の審査が通らないはずの飲食店に対し、他人名義で契約を結んだとして同社社員らが逮捕され、会社自体も組織犯罪処罰法違反の疑いで書類送検された。以降、信用不安が一気に表面化し、資金調達が難しくなり、先行きの見通しが立たず、今回の事態となった。
全東信の倒産は「準自己破産」という形式が取られている。「準自己破産」とは、取締役会が開催できない、あるいは一部の役員が反対するなどの状況下で、役員個人が自ら申し立てる破産手続きである。帝国データバンクの森山玄将氏(情報統括部 情報取材課)は「何らかの理由で取締役会が開催できず、準自己破産になった」と指摘する。
帝国データバンクの発表によると、負債額は金融機関からの借入金を中心に約1151億6400万円とされるが、今後変わる可能性もあるという。「申し立て時点で判明している負債額はあくまで一時点なものであり、その後支払ったものや新たに発生した負債もある。今まさに問題となっている飲食店への未払い金などが複雑に絡み合っており、確定値はまだ見えていない」(森山氏)
法的整理の手続きには、民事再生法など企業が事業を継続しながら裁判所の監督下で再建を目指す「再建型」の方法もある。全東信が再建型を選択しなかった背景について、森山氏は「全東信は実質的に債務超過状態に陥っていたと考えられる。事業を継続しながら債務を弁済していくことはほぼ不可能であり、破産を選択する以外なかった」と分析する。
現在、同社の決済システムを利用していた、日本全国の飲食店が困窮している。街で「諸事情により現金払いのみ」という貼り紙を目にすることが増えたと感じる人もいるのではないだろうか。都内のある飲食店オーナーは「個人経営は自転車操業の経営も少なくない。夏の書き入れ時を前に、つぶれる店がこの2カ月くらいで増えるのではないか」と話す。
こうした飲食店の連鎖倒産について森山氏は、全東信からの支払いが滞り、資金繰りが悪化する以外の可能性も指摘する。「長期間カードが使えないことで顧客を逃してしまうことも考えられる。こうした機会損失による売り上げの減少から、連鎖倒産が起きる可能性は十分にある」(森山氏)
【全東信の破産】経産省、中小企業をスピード支援 4つの施策、内容は?
「全東信の破綻」裏側で何が? 飲食店支えた、規制なき「ファクタリング」の功罪Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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