その変化は、選ばれる物件にも表れている。特に注目したいのが築年数だ。首都圏でリノベるを利用した人が購入したマンションの平均築年数は36.5年。築30年どころか、築40年前後の物件を購入するケースも珍しくない。
以前なら「そんなに古くて大丈夫?」と思ったかもしれない。しかし最近は、築年数だけで判断せず、耐震性や管理状況を確認した上で、立地や広さを重視する人が増えているようだ。
リノベーションを前提にすれば、築年数がたった物件でも、自分の暮らしに合わせて住まいを変えられる。「古い家を選ぶ」のではなく、「理想の場所で、自分らしい暮らしをつくる」という発想だ。
リノベーションで重視されるポイントも、この10年で大きく変わった。P&C本部ブランド戦略部の木内玲奈さんによると「以前は、『カフェみたいな家にしたい』『レンガ風の壁にしたい』『広いリビングがほしい』といった、デザインを重視した要望が目立っていました」。ところが最近は、「家事をラクにしたい」「生活動線を良くしたい」といった、暮らしやすさを重視する要望が目立つようになった。
代表例が「回遊動線」だ。キッチンから洗面所へ、そのままリビングへとぐるりと回れる間取りなら、料理をしながら洗濯などの家事もこなしやすい。
間取りや暮らし方のイメージを広げたのが、SNSの存在だ。かつては住宅展示場や住宅雑誌で理想の家を探していたが、いまはInstagramやYouTubeで実際に暮らしている人の家を見て、「この動線いいな」「この収納便利そう」と具体的なイメージを膨らませる。SNSは、いまや“住宅展示場”のような役割も果たしているようだ。
こうした価値観の変化は、コロナ禍によってさらに加速した。リモートワークの広がりで、自宅に仕事のためのスペースを求める人が増加。玄関も、単なる靴を置く場所ではなく、収納や趣味を楽しむスペースとして見直されるようになった。
その流れは、水回りにも及んでいる。とりわけ変化が大きいのが洗面所だ。
「洗面所は浴室の隣にあるのが一般的でしたが、最近はリビングの近くや廊下に設けるケースが増えてきました。朝の"洗面所渋滞"を避けるだけでなく、ランドリースペースと一体化させ、『洗う・干す・たたむ・しまう』を一カ所で済ませたいというニーズが高まっています」(木内さん)。
洗面台をインテリアの一部として楽しむ人も現れ、洗面所は身支度だけでなく、日々の暮らしを支える空間へと変わりつつあるようだ。
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