Google親会社「四半期で純利益18兆円」のカラクリ AIでも検索でもない“本当の主役”古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」

» 2026年07月28日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

筆者プロフィール:古田拓也 株式会社X Capital 1級FP技能士

FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経てX Capital株式会社へ参画。


 米Googleを傘下に収める米Alphabetが、とんでもない数字を出した。2026年4〜6月期の純利益は1121億ドル(約18兆円)で、前年同期の約4倍に膨らんだ(決算資料)。四半期で18兆円という利益は、国内大手企業の年間利益をはるかに超える規模だ。

 だが、この「4倍」を「AIでGoogleが絶好調」と単純に受け取ってはいけない。利益を押し上げた最大の主役は「Google検索」でも「AI」でもなかった。数字の裏側を分解して、そのカラクリを解いていく。

photo 米カリフォルニア州にあるAlphabetやGoogleの社屋(写真:ゲッティイメージズ)

Google親会社「四半期で純利益18兆円」のカラクリ “本当の主役”は

 まず結論から言う。純利益が4倍になった最大の要因、それは――。

 純利益の増加を支えたのは、Alphabetが出資する企業の株式評価益、つまり含み益だ。2026年4〜6月期の純利益は1121億ドルで、前年同期の281億ドルから約298%増加した。しかし、そのうち約771億ドル(約12兆円)分を押し上げたのは、同社が投資している企業の未実現評価益(利益が確定していない含み益)による一時的なものであるとみられている。

 その背景には、2018年に適用された米国の会計ルールがある。企業が保有する株式は、まだ売却していない“未実現”の評価損益も含めて、時価の変動を毎期の純利益に反映させる処理方式が取られている。

 対象は上場株だけでなく、非上場企業への出資も含まれる。

 新たな増資などで評価額が更新されれば時価評価の対象になる。Alphabetは米SpaceXや、生成AIサービス「Claude」で知られる米Anthropicといった有望な非上場企業に数多く出資しており、それらの評価額が急騰したことで、まだ1株も売っていなくても“評価益”として純利益に流れ込んだのである。

 重要なのは、これが未実現であるという点だ。現金は1円も入っていない。

 あくまで帳簿上の含み益であり、来期に出資先の評価額が下がれば、今期とは逆に巨額の評価損として純利益を押し下げるリスクがある。株価次第で上にも下にも大きく振れる、いわば机上の利益といっても過言ではない。

 現に、SpaceXの株価は下落傾向に転じており、上場時の価格を大きく下回っている。直近四半期に利益の押し上げへ貢献したSpaceXの株式が、今期には利益の押し下げ要因に転じている可能性がある。

photo SpaceXの株価の推移(出所:米NasdaqのWebサイトに掲載されているチャート図)

本業も堅調 「Google Cloud」が高成長・高採算の柱へ

 もっとも、Alphabetの中身がスカスカかといえば、全く違う。花火を取り除いても、本業の地力はしっかり伴っている。

 全社の売上高は1198億ドルで、前年同期比24%増だった。けん引役の「Google Cloud」セグメントは売上高247億ドルで82%増と急加速。クラウド事業の営業利益は88億ドルと、前年同期の28億ドルから3倍以上に拡大した。

photo Alphabetの売り上げ概要(出所:Alphabetの決算説明スライド(PDFファイル))

 とりわけ伸びたのは、業務変革や生産効率の向上のためにAIを導入する企業向けのサービスだ。生成AIサービス「Gemini」をはじめとする自社AIをクラウド経由で提供し、その計算基盤となるデータセンターや専用半導体ごと使ってもらうビジネスモデルが規模を伴って業績に貢献しつつある。

 Alphabetのクラウド事業は規模が膨らむほど採算も改善し、いまや高成長かつ高採算の柱へと様変わりした。

 さらに「ChatGPT」登場以来、市場が最も恐れてきた「生成AIに検索が食われる」シナリオだが、これに対してもAlphabetは業績で反論している。

 Googleの検索広告ビジネスは、前年同期比17%増の632億ドルだった。前四半期の伸び率が約14.5%だったため、成長速度が加速している。「YouTube」の広告収入も13%伸長した。

 AIは、検索の分野においても、稼ぎ口を広げる装置になっている。

決算は絶好調、それでも株価は「下落」した

 興味深いのは、これほどの好決算にもかかわらず、決算発表後にAlphabetの株価が下落したことだ。

 理由は、AIへの投資額にある。同社は2026年の設備投資(CAPEX)計画を1950億〜2050億ドルへと引き上げた。投資の中身は、データセンターやAI半導体への、途方もない規模の先行投資だ。市場が固唾をのむのは、純利益が4倍になったという過去の結果ではなく、この巨額の設備投資が将来きちんとリターンを生むのかという点である。

 含み益で膨らんだ純利益は、むしろこの重い投資負担の見かけを覆い隠してしまう面すらある。

 つまり投資家にとって、今回の決算の読みどころは「4倍」ではない。見るべきは次の3点だ。

  1. 純利益をかさ上げした株式評価益は未実現で、来期は反転し得る一時要因であること
  2. その裏でクラウドが82%増と本物の成長を続けていること
  3. そして1950億ドル超というAI投資が、その成長を持続させる糧になるのか、それとも回収不能の重荷になるのか

Alphabet決算をどう見ればよいのか

 「Google純利益4倍」という見出しは強烈だ。だが、その主役はGoogleが検索やAIで稼いだ現金ではなく、SpaceXという出資先の含み益だった。

 しかしその土台では、AIブームの恩恵を受け、クラウドと検索で“本物の成長”を着実に積み上げている。そんな成長は、翌期には2000億ドル規模の設備投資にのしかかる減価償却となって見えにくくするだろう。

 今回の決算は結局、表面的な二元論――「4倍の利益はすごい」「否、その利益は株の含み益だからすごくない」では語り尽くせない。決算から持ち帰るべきは、決算を多面的に分解することにある。

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