ビール会社が「まず一杯の水」にこだわった理由 試作7回で生まれた"ふらつくグラス"週末に「へえ」な話(2/3 ページ)

» 2026年08月09日 07時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

一体型のU字グラスへ

 これで完成かと思いきや、そうはいかなかった。今度はテーブルに置くと安定しなかった。底が半球状だったため、置いた瞬間にぐらぐらと揺れてしまう。「ふらつく」という動きは再現できても、グラスとして使えなければ意味がない。

大きく変えたのは「口の開き」(写真の2→3)

 そこで底も一から見直した。クルマのタイヤのように底の中央を平らにし、縁に丸みを持たせることで接地面を広げた。さらに、小さなストッパーを設け、「左右にはふらつくが、前後には倒れない」という絶妙な動きを実現した。

 完成品だけを見ると、「ちょっと変わった形のグラス」という印象で終わってしまう。しかし、その飲み口の開き方や底の形には、「水がこぼれる」「安定して置けない」といった失敗を一つずつ解決した跡が残っているのだ。

 このアイデアの出発点は、社内の飲み会にある。社員の多くは「お酒を飲むなら水も飲んだほうがいい」ということは理解していた。しかし、飲み会になると話に夢中になり、水を注文することを忘れてしまう。

 「どうすれば、水を飲むことを忘れなくなるのか」。そこで出てきたアイデアが、「ビールのグラスに水のグラスをくっつけてしまえばいい」という発想だった。当初は天秤のように2つのグラスを載せる案もあったが、持ちやすさや使い勝手を考え、一体型のU字グラスへとたどり着いたという。

 もちろん、適正飲酒を呼び掛ける方法は、ほかにもある。ポスターを掲示することもできるし、SNSで「水も飲みましょう」と発信することもできる。

 それでも、人は忘れてしまう。ならば、忘れない仕組みをつくってしまおう。そうして生まれたのが、このグラスだった。

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