日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
どのような業界でも、社会人として長く働いてきた人なら程度の差こそあれ、組織における「失敗」を経験してきたはずだ。
計画の詰めが甘かった。想定外のトラブルが起きてしまった。気の緩みから大事な確認を怠ってしまった……など、振り返れば、さまざまな失敗の原因が思い出されるだろうが、中には、こんな“負けパターン”を経験した人もいるだろう。
冷静かつ客観的に状況を分析すると、失敗することがある程度予想できていて、組織内でもやめたほうがいいという慎重論が圧倒的に多かった。にもかかわらず、社長や会長など、決定権を持つ人物が「ここまできて今さらやめられるか」と、聞く耳を持たずに強行。結果、大きな損失につながった――。
「ああ、うちの会社の新規事業がまさにそうだったよ」などと、嫌な記憶がよみがえった人も多いかもしれない。ただ、これは危機管理の世界では典型的な問題であり、「コンコルド効果」や「サンクコスト効果」(埋没費用効果)として知られている。
前者は1960年代、超音速旅客機コンコルドを英国とフランスが共同開発していた際、採算性への懸念が指摘されていたにもかかわらず、それまでに巨額の投資をしていたことから、中止を決断できず、結果的に大赤字を招いたことに由来する。サンクコスト効果も同様で、これまで投じた資金や時間を惜しんで、合理的な撤退判断ができないことを意味している。
筆者は報道対策アドバイザーとしてこれまで数多くの「失敗企業」を見てきたが、その判断ミスの原因を見ていくと、このコンコルド効果にたどり着く。
分かりやすいのは、企業の主力商品に問題が見つかった場合の対応だ。本来はすぐに顧客や取引先への情報開示、回収などの対応に動かなくてはいけないが、これまでの多額の投資や開発期間が頭によぎって、なかなかその判断に踏み切れず、結果的に、被害を拡大させてしまう。さらに「隠蔽(いんぺい)しようとしていたのか」などと疑われてブランドを大きく毀損(きそん)する――なんてことは「不祥事企業ではよく見られるケース」と言っていい。
この組織における病理を象徴するのが、東芝の不正会計事件だ。
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