ビジネスパーソンの皆さんが最も関心があるのは経済ニュースだろうが、今後しばらくは政治ニュースにも注目していただきたい。「失敗」の可能性が高い政策を推し進めようとするとき、リーダーはどう動いて、どのような論理を用いるのか、ということは組織人としてぜひ知っておいてほしいからだ。
注目してほしいのは、高市首相が精神論を持ち出すタイミングだ。筆者は、コンコルド効果によって、「撤退」の判断ができなくなってしまったリーダーと、何度か話をしたことがある。側近からの依頼で、再考を促したこともある。しかし、ほとんどの場合は、次のような言葉を返され、議論が行き詰まった。
「これまで多くの人が関わってきて、彼らの思いがあるので今さら簡単にやめることはできないんです」
こう言われてしまったら部外者は反論しにくくなるし、組織の構成員も従うしかない。私たちは幼少期から「絆」や「みんなのため」という集団を重視する教育を受けてきたので、こういう精神論を持ち出されてしまうと、お手上げなのだ。たとえその先にどのような結果が予想されても、「みんなで頑張れば、なんとかなるかもしれませんね」と同調してしまうものなのだ。
太平洋戦争も、そうした例の一つだった。ビジネスパーソンも必読の書籍『失敗の本質:日本軍の組織論的研究』(ダイヤモンド社)などでも分析されているが、日本の敗因の一つとして、「コンコルド効果」に似た構造が指摘されている。
映画『開戦前夜』でも描かれているが、1941年には、総力戦研究所が日米開戦について「日本必敗」との結論を出していた。そんな「分かりきった失敗」になぜ突き進んでしまったのか。背景には、米国との交渉で日本が中国からの撤兵を受け入れられなかったことがある。保守派がよく主張する「白人国家からアジアを解放する」といった大義だけが理由ではない。
泥沼化した日中戦争で約10万人の戦死者を出していたため、大陸から撤退すれば、それまでに払った犠牲が無駄になる――。そう考えて撤退できなくなる、いわゆる「戦死者の論理」と呼ばれる構図である。
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