ゼブラは1897年の創業以来、紙に書くための道具をつくってきた。だが紙だけでは、「書く」ことの可能性を広げにくい。その課題意識から、これまで培ってきたアナログの技術をデジタルにも生かす新規研究開発室が生まれた。
この部署で企画が動き出したのが2021年だ。コロナ禍でタブレットに書き込む機会が増えるとみて、開発に着手。当時目指していたのは、紙とiPadの両方で使えるペンではない。まずは、ゼブラが培ってきた筆記技術をiPad向けに生かすことだった。
開発を担当した同室の田中義明氏によると、インクを入れていないボールペンのペン先でiPadに書くと、書き味が良かったという。田中氏は、ボールが転がっているからだと考え、顕微鏡で観察したが、ボールは回転していなかった。
印刷面のようにつるつるした場所ではボールが回らず、インクが出なくなる。社内で「ツル抜け」と呼ぶ、ボールペンにとって避けたい現象だ。これまで「どこにでも書ける」ことを追求してきたボールペンにとっては、いわば弱点だった。
ここで、ゼブラは弱点の見方を変えた。「インクを入れると潤滑性が増し、ボールは転がりやすくなる。それでもガラス面では回らないのなら、『紙ではインクが出るが、ガラス面では出ない』という性質そのものを機能として使えるのではないかと考えた」と田中氏は振り返る。
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