2つの事例に共通するのは、AIに渡すデータを整理する過程で、社内にある知識やルールの課題が明らかになったことだ。
清水氏は、RAGとは「回答品質を高め、改善し続けるプロジェクト」だと説明する。
マニュアルや業務フロー、過去のレポートなどを集めるだけでは、十分な回答にはつながらない。資料に書かれていない前提や、現場で培われた経験、部門ごとの判断などを整理する必要がある。
そこで重要なのが「暗黙知から形式知への転換」だ。現場で経験を積んだ社員が知っていること、部門内では当たり前になっている判断基準などを、他の社員にも分かる形にする。そのためには、資料を作る作業に加えて、現場の対話や情報の整理、そしてそれを経営層が把握しておくことが必要になる。
清水氏は、知識を個人から個人、個人から集団、集団から組織、そして組織から個人へと循環させるという経営学者・野中郁次郎氏の考え方に言及。対話し、情報を統合し、実際に行動しながら学ぶことで、暗黙知と形式知を行き来させ、知識を増やしていく必要があると指摘する。
RAG導入を進めると、社内にある知識の状態が具体的な形で見えてくるという。データが整理されていなければ、その問題が表面化する。判断基準が部門ごとに違えば、その違いも見えてくる。これまで曖昧なまま運用されていたルールや情報の不足が、AIの回答を通じて明らかになることもある。
そのため、RAGのプロジェクトでは、どの回答なら利用できるのか、判断できない場合は誰に確認するのか、データをどう更新するのかといった運用まで考える必要がある。回答品質を継続的に改善するため、現場と経営層が連携しながら、社内の知識を整理していくことが求められると清水氏は指摘している。
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