ITmedia デジタル戦略EXPO 2026 夏では、各分野の第一人者や企業の現場でビジネス変革に取り組むリーダーの声を通じて、経営×IT×現場のコラボレーションで全社変革を進めるヒントをお届けします。
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困りごとも購入前の疑問も、検索エンジンではなくまずAIに聞く――。この行動変化が、企業のFAQの位置付けを変え始めた。LIXILのFAQサイトでは、AI経由の流入がこの1年で約3倍に増えた。「FAQに来てもらう」から「AIに読まれる」への転換が始まっている。
住宅設備大手LIXILのFAQサイトでは、生成AI経由のセッション数がこの1年で約3倍に増えた。全体に占める割合はまだ1割に満たず、約8割は検索エンジンなどのオーガニック流入だが、増加のペースが速い。
しかもこの数字は、変化の一部しか捉えていない可能性がある。FAQを訪れるユーザーは、何らかのトラブルの解決法を目指してやってくるわけだが、AIの回答画面で疑問が解消すれば、利用者は企業サイトをクリックしない。いわゆるゼロクリック問題があるからだ。同社カスタマーサービス統括部の長崎浩之VOC改善推進グループリーダーは、クリックせずに自己解決している利用者が、サイトに流入している利用者とは別に、相当数いるとみられる。
LIXILにFAQ検索システムを提供するHelpfeelも、複数の顧客企業で、ChatGPTなどの汎用AIから企業FAQサイトへの流入増加を確認している。背景にあるのは購買行動の変化だ。「商品の詳細についても、皆さんAIチャットツールで聞くようになっている」と同社の洛西一周CEOは話す。
「困ったらググる」を前提に、企業は検索エンジンから見つけてもらいやすいよう、FAQやサポートページを整備してきた。その前提が入口から変わり始めている。
変化はアクセス経路にとどまらない。洛西氏が挙げるのは、FAQが答えるべき疑問の範囲そのものの拡大だ。従来のFAQは、購入した商品の使い方やトラブルに答えるアフターサービスの道具だった。購買前の疑問に答えるのはマーケティングの仕事であり、両者は分業されてきた。洛西氏によると「その間が溶けてきている。AIには購買前の疑問も購買後の疑問も聞くので、FAQの守備範囲が両方に広がっている」という。
具体例が解約方法だ。実のところ、多くの企業はサイト上で解約手順を目立たなくしている。だが実際には、違約金なくスムーズにやめられるかを入会前に調べる人が多い。解約方法は購買後ではなく購買前の疑問であり、この情報がないと入会してもらえないのが実情だ。
ECサイトのギフトラッピングも同じ構図だ。化粧品ブランドのラッシュのECサイトでは、意外なことにラッピングに関するFAQへのアクセスが最も多かった。事前にラッピングの可否を確認した上で、購入を決めるユーザーが多い。
健康食品や化粧品では、持病やアレルギーに関わる相談がコールセンターに数多く寄せられる。個別の相談に答えることは医薬品医療機器等法(薬機法)上できないが、商品の成分や向き不向きを一般論としてFAQに載せることはできる。これも購買前の疑問への回答になる。
洛西氏は企業の本音をこう見立てる。「購入前の情報は出して安心させたい。購入後は隠したい。だがAI時代には、隠す意味はなくなっていく。一定程度公開していくことが、結局は購買につながる」。サポート情報は、コスト削減の道具からマーケティング資産に変わりつつあるわけだ。
ChatGPTに化粧品について尋ねた例。FAQで情報公開しているラッシュの商品は具体的に推奨され、公式情報のない競合製品は「具体的な情報は見つかりませんでした」との回答になった。公式FAQの有無が、AIの回答の差になって表れる(出典:Helpfeel資料)
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