こうしたFAQの整備を先行して進めてきたのがLIXILだ。きっかけはAIではなくコロナ禍だった。コールセンターの安定運営が課題になり、電話からWebへ問い合わせの経路を移す「チャネルシフト」を掲げた。
まず取り組んだのが、社内には存在していたものの、公開していなかった情報の開示だ。代表例がセルフメンテナンス情報である。従来は作業の難易度や安全性の観点から公開せず、窓口で人が説明する前提としてきた。しかしコロナ禍の在宅生活で自己解決ニーズが高まり、DIY需要も伸びた。
そこで方針を転換し、利用者が安全に作業できるよう、マニュアルや動画などを添えて公開する形にした。玄関ドアのドアクローザーなら、脚立の使用や落下の危険といった注意点から使う工具のサイズまで、手順をFAQ化している。カタログや取扱説明書も、PDF掲載からWeb化を進めている。
顧客に積極的に公開し始めたのは2022年だ。結果、問い合わせ件数は2024年まで年10%程度減り続け、2025年も7%減った。同じ期間にFAQのセッション数は約1.6倍に増えた。「FAQの利用が増えると問い合わせも減るという傾向が数字としてきれいに出ている」とLIXILの長崎氏は説明する。
LIXILがFAQ活用に注力した背景 年120万件超の入電やコロナ禍のコールセンター人員不安に加え、相談センターのアンケートでは80%以上の顧客が問い合わせ前に何らかの検索行動を取っていた(LIXILのTCシンポジウム2024講演資料を基に筆者作成)いまの力点は、このコンテンツをAIに読まれる形に作り替えることだ。冒頭の一文で結論が出るようにする、ページを構造化する、FAQ同士を相互リンクでつなぐ。「AIの一次情報のデータベースになるイメージを持ちながら、AIフレンドリーなコンテンツを作りにシフトさせている」(長崎氏)
効果測定には「引用率」という指標を検討している。自社サイトに残る検索クエリの上位100件について、AIの回答に自社FAQがいくつ引用されるかを測る。クリックや順位で測れたSEOと違い、ゼロクリック時代では、AI経由で自己解決した利用者の行動を追跡できない。引用率はその代替として妥当かを評価している段階で、KPIとしての運用はこれからだ。
「引用率」の考え方。自社サイトに残る検索クエリ上位100件をAIに問い、自社FAQが回答の根拠として引用された件数の割合を測る。クリックでは追えないAI経由の自己解決を捉える試みで、KPIとしての妥当性は評価中だ(Helpfeelへの取材を基に筆者作成)
FAQシステム刷新前後のKPIの変化。2026年6月実績では、FAQ公開数は月平均13件から48件、エンゲージメント率は41.4%から65.7%、アンケート解決率は27.0%から42.4%と向上した。旧環境では未計測だった検索による離脱率は13.9%(LIXILのTCシンポジウム2024講演資料[Helpfeel『ナレッジジャーニー2025』掲載]と取材を基に筆者作成)
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