藤三は広島県呉市を中心に、県内で26店舗をチェーン展開するスーパーマーケットだ。同社では総菜商品の値引きについて、以前から2つの課題を抱えていたという。
1つは、値引き判断が担当者の経験や感覚に委ねられていたことだ。「多めに余っているから早めに値引こう」「雨で客足が減りそうだから強めの値引きに」など、主に店長や店次長が売り場の状況を見て判断していた。
「値引きする時間や回数、割引率に全社共通のルールはありませんでした。それぞれの判断の差で、利益率にも差が出ていたと思います」と話すのは、藤三で全26店舗分のアウトパック総菜(専用センターやベンダーで調理・包装された商品)の数量や品ぞろえを担当する角田諭氏(ディストリビューター推進室室長 兼 飲食部バイヤー)だ。
店舗には、値引きシールが3種類ほど用意されていたが、「1割引、3割引、5割引」の店もあれば、「2割引、3割引、5割引」の店もあった。閉店間際には、半額にして売り切るものが多いが、それまでの判断は各店舗に委ねられており、割引率も統一されていなかった。
また、同社では閉店間際まで商品を並べ、できるだけ欠品させない方針を掲げている。売り上げを落とさず、値引き額と廃棄による損失をいかに減らすかも課題だった。
藤三では、スーパー向けの自動発注システムなどを開発してきたシノプス(大阪府豊中市)と、ラベルプリンターなどを手掛けるサトー(東京都港区)による「AI値引きソリューション」の導入を検討した。
各店舗が持つ過去2年分の販売実績や来客数と、シノプスが保有する各地域の天候・気温などのデータをもとに、AIが需要予測を行い最適な値引き率を割り出す。担当者が売り場で該当商品のバーコードをスキャンし、その時点での在庫数を入力すると、サトーのラベルプリンターから値引きラベルを発行できる仕組みだ。
シノプスがAI値引きの開発に着手したのは2020年。スーパー向けの自動発注システムを提供する中で、取引先から「総菜の値引きに苦労している」という声を聞いたことがきっかけだった。初版は約3カ月で完成したが、実店舗では値引き率が高すぎたり、逆に低すぎて商品が残ったりするケースもあり、安定して効果が出るまでには約1年を要したという。
藤三では、他社事例の検討やシミュレーション、投資回収の試算を経て、まず3店舗でテストを実施した。売上規模や閉店時間に加え、「担当者がシステムをきちんと使ってくれるか」という点も考慮して店舗を選定したという。
なぜファミマの「1998円腕時計」は完売したのか “ちょうどいい一本”がササった理由
富士そば「外国人観光客お断り」は悪なのか 立ち食いそば騒動が問いかけた現実
「JALとANA」どこで違いが生まれたのか? コロナ禍を乗り越えた空の現在地
「廃虚アウトレット」の乱立、なぜ起こる? 絶好調なモールの裏で、二極化が進むワケCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング