スーパーから「値引きシール」が消える? 「2割引」「半額」の舞台裏で起きていること値引きをAIに任せる(2/6 ページ)

» 2026年09月07日 06時00分 公開
[田窪綾ITmedia]

値引き時間や割引率は店舗ごとにバラバラだった

 藤三は広島県呉市を中心に、県内で26店舗をチェーン展開するスーパーマーケットだ。同社では総菜商品の値引きについて、以前から2つの課題を抱えていたという。

 1つは、値引き判断が担当者の経験や感覚に委ねられていたことだ。「多めに余っているから早めに値引こう」「雨で客足が減りそうだから強めの値引きに」など、主に店長や店次長が売り場の状況を見て判断していた。

スーパー「藤三」

 「値引きする時間や回数、割引率に全社共通のルールはありませんでした。それぞれの判断の差で、利益率にも差が出ていたと思います」と話すのは、藤三で全26店舗分のアウトパック総菜(専用センターやベンダーで調理・包装された商品)の数量や品ぞろえを担当する角田諭氏(ディストリビューター推進室室長 兼 飲食部バイヤー)だ。

 店舗には、値引きシールが3種類ほど用意されていたが、「1割引、3割引、5割引」の店もあれば、「2割引、3割引、5割引」の店もあった。閉店間際には、半額にして売り切るものが多いが、それまでの判断は各店舗に委ねられており、割引率も統一されていなかった。

 また、同社では閉店間際まで商品を並べ、できるだけ欠品させない方針を掲げている。売り上げを落とさず、値引き額と廃棄による損失をいかに減らすかも課題だった。

 藤三では、スーパー向けの自動発注システムなどを開発してきたシノプス(大阪府豊中市)と、ラベルプリンターなどを手掛けるサトー(東京都港区)による「AI値引きソリューション」の導入を検討した。

 各店舗が持つ過去2年分の販売実績や来客数と、シノプスが保有する各地域の天候・気温などのデータをもとに、AIが需要予測を行い最適な値引き率を割り出す。担当者が売り場で該当商品のバーコードをスキャンし、その時点での在庫数を入力すると、サトーのラベルプリンターから値引きラベルを発行できる仕組みだ。

ラベルプリンターや自動認識ソリューションを手掛けるサトーの端末。AIが算出した値引き率に応じてラベルを発行する(画像提供:サトー、以下同)

 シノプスがAI値引きの開発に着手したのは2020年。スーパー向けの自動発注システムを提供する中で、取引先から「総菜の値引きに苦労している」という声を聞いたことがきっかけだった。初版は約3カ月で完成したが、実店舗では値引き率が高すぎたり、逆に低すぎて商品が残ったりするケースもあり、安定して効果が出るまでには約1年を要したという。

 藤三では、他社事例の検討やシミュレーション、投資回収の試算を経て、まず3店舗でテストを実施した。売上規模や閉店時間に加え、「担当者がシステムをきちんと使ってくれるか」という点も考慮して店舗を選定したという。

店舗ごとや売り場ごとに判断していた値引き業務が標準化できる

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