両氏とも、AI活用の可能性について否定はしていない。むしろ作業自体はAIに委ね、その浮いた時間で「生身の人間と向き合い、挑戦と失敗を繰り返すハイブリッドな経営を目指すのが最適」と提言する。
福田氏は「『失敗を恐れるな』と言うなら、経営者自身が一番泥をかぶり、100回失敗しても101回挑戦する姿を見せないと意味がない」と主張する。経営者がリスクを取って現場で汗かく姿を見せなければ、組織に熱狂の波は広がらないためだ。失敗を許容する「覚悟」をリーダーに求めている。
「上司が『失敗してもいいぞ』と言える空気を作ることが、大事です。ビジネス書って『成功法則』ばかり書かれていますが、本当に価値があるのは『失敗談』。失敗の数だけ成功の確率が上がるんだから、社員にはどんどん失敗させればいいんです」
大﨑氏も「世の中がAIやネットでスピードアップすればするほど、生身の人間と向き合い、声を聞き、背中を押してあげる『人間くささ』の価値が上がっていく」と語る。「AI時代だからこそ、人間を諦めちゃいけない。AIに教わるんじゃなくて、AIを使って人間をもっと面白くするんです」
あらゆる業務プロセスへのAI導入が不可避となる中、いかに作業の効率化を図りつつ、自社ならではの独自性や人材の創造性を損なわずに組織文化へ落とし込むか──多くの経営層がそのかじ取りに頭を悩ませている。AIが便利さと可能性を広げられる期待がある一方、思考力や表現力をAIに過度に依存すると、創造性や考える力、訓練や経験で得られる能力が衰える危険も伴う。
AIが標準的な答えを出すことで、人間の「均質化」が進む。実は大事なのはその先にある。「個々の持つ力こそがビジネスの成否を左右する」というのが、両氏の見通しだ。
例えば「文章を書く」「地図を読んで旅をする」といった体験を通して基礎能力を鍛えることが、AIと向き合う上でも有利に働くという。スマホネイティブ世代には、地図を読んだことがなく、スマホがないと目的地に到着できない若者も存在する。福田氏はこうした若者の体験不足を懸念しつつ「さまざまな訓練や現場での経験こそが、人材育成には必要」と言い切る。福田氏は「AI依存では、私や大﨑さんのような『ややこしいおっさん』にはなれません。AIが一番苦手な部分だからです」と話す。
AI時代における組織経営の正解は、明確だ。定型業務など「80点でいい作業」は徹底的にAIに任せ、経営者は個の才能を解き放つ「環境づくり」に集中することである。AIが弾き出す均質化された答えからは、人を惹きつける熱狂もイノベーションも生まれないからだ。
リーダーがやるべきは、AIで浮かせた時間と資金を現場の「人」へ注ぎ込み「100回失敗しても挑戦できる環境」を作ることだ。現場体験を通して育った「尖った個」が、自由に暴れられる舞台を整える。この「現場と異能への投資」に舵を切ることこそが、AI時代に他社を圧倒し、強い組織を作る勝ち筋だ。
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