睡眠と仕事のパフォーマンスの関係を検証する際、前提として理解すべきなのは、単に5時間しか寝ない人と9時間寝る人を集めて比べるだけでは、体質の優劣を公平に検証できないことだ。睡眠時間そのものだけでなく、その人に必要な睡眠量を確保できているかを確認する必要がある。
その上で、実験や研究から見えてくるのは、「睡眠を削ることは不利になりやすい」ということだ。
例えば、健康な成人を対象に、毎晩の睡眠時間を4時間・6時間・8時間に分けて14日間追跡した米国の実験では、4時間および6時間睡眠の条件では、課題の成績が悪化した。だが、睡眠時間が短いほど眠気を自覚するわけではなく、参加者は自身の能力低下を十分に認識していなかった。
重要なのは、「眠くない」という主観的な感覚と、「実際に能力を維持できているか」は一致しないということだ。したがって、本人の「短時間睡眠でも仕事に支障はない」という申告だけで、その人が短眠体質であるとは判断できないわけだ。
ただし、睡眠不足になるとあらゆる能力が一律に落ちる、と言い切ることもできない。スイスの研究者らが2024年に発表した、44の研究を統合した分析によると、一晩の睡眠制限によって持続的注意力は低下したものの、作業記憶や抑制制御などでは有意な低下が確認されなかったと報告されている。
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