現在日本では、旗艦店づくりが流行しています。2025年から2026年にかけて都内の新宿、銀座、原宿に各ブランドの旗艦店が続々とオープンしました。ファッション関係だけでなく、グーグルのようなIT企業までもが直営旗艦店を開業するようになっています。
ここまでの旗艦店ラッシュを迎えたのはなぜなのでしょうか。
筆者は旗艦店戦略には次の5つのメリットがあると考えています。
1.実物をトータルで提案できるという空間価値提供
生地の質感、着心地、履き心地、接客を通じてブランドの世界観や哲学を消費者に伝えられる体験型提案を実現でき、店舗としても高い売り上げを実現しやすくなります。
2.情報発信・拡散の起点
内装デザイン、ディスプレイ、限定商品、イベントがメディアやSNS投稿を生み、その店の売り上げに加え、他店舗やECとの相乗効果につながります。
3.国内客と訪日客の同時集客による客数の最大化
銀座、原宿、新宿という立地は国内各地からの買い物客とインバウンド客、両方との接点を可能にし、客数を最大化させることが可能となります。
4.コミュニティづくり
接客、会員登録、イベント、購入後のサービスまで各社が直接設計できます。
5.長期的な顧客とのリレーションシップ構築
日本でも有数の人流がある好立地にブランドの象徴的な店を構えることで、長期的な顧客とのつながりと将来の新規顧客を獲得する拠点にもできます。
ユニクロはこれまでの「店を増やして顧客との接点を持つ戦略」から「店を減らして顧客を引き寄せる戦略」へと転換し、上記のようなメリットを享受しようとしています。
人口が減少する中、地方では標準店を増やしても既存店との売り上げの奪い合いが起こるだけです。一方、都市の中心部には、その街の住民だけでなく、周辺地域の買い物客、通勤客、国内旅行者、インバウンド客が集まります。旗艦店では、こうした異なる需要を一つの拠点で獲得し、さらにブランドイメージを高めていくことが可能になります。
ただ、都心部は国内最高の立地だけに、家賃は高く、人件費を含めて想定以上の経費がかかります。それを今後のブランド力構築のための広告宣伝費として割り切ることができないと、ブランドによっては経費倒れになることも十分に考えられます。
「企業として、世界一を目指す」と言える企業でないと、都心での旗艦店戦略は実現できませんが、地方都市の中心部で、その地域に密着した企業が旗艦店戦略を採用することは、今後の地方企業のブランド戦略の一つとしては有効な選択肢かもしれません。
旗艦店戦略を自社の最重要出店戦略にできるかどうか。今後は各社のブランド哲学が問われることとなりそうです。
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。直近では著書『図解入門業界研究 最新 アパレル業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本[第5版]』を刊行した。
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