ネットワーク遮断下でも動作するHP IQは、どこでも安全に働ける環境を提供する。一方で世界的に広がる「オフィス回帰の動き」は「柔軟な働き方」(Future of Work)を掲げるHPにとって逆風にはならないのだろうか。
「答えはノーです。社員がオフィスに集まり、連携を深める良さは確かにあります。しかし未来の働き方の本質は、オフィスとリモートを融合した『ハイブリッド』にあります。PC本体だけでなく、モニターやカメラといった周辺機器まで一貫して提供できるHPだからこそ、働く場所を問わず最高のパフォーマンス環境を提供できるのです」
ボイルSVPは、自律型の組織を志向しているようだ。ビジネスSNS「LinkedIn」のプロフィール欄では、次のような自論を展開している。「リーダーシップとは、誰かがオフィスに入ってきたとき、誰がリーダーなのか分からない状況を作ることだ」
組織の各階層にリーダーシップを分散させ、自らは一歩引いて権限を委譲する。成果を焦るあまり、トップ自らが前に出て手を出したくなる誘惑にどう抗ってきたのか。その思考の原点にあるのが、ボイルSVP自身の音楽活動だ。
「私はドラマーであり、シンガーであり、ギタリストでもあります。ドラマーは曲のペースをコントロールしますが、ソロで目立つ機会は限られます。シンガーは楽曲に色を添え、ギタリストは曲の展開に合わせて、時には主張を抑えて静かに伴奏へ回らなければなりません。組織もこれと全く同じです。大切なのは、全員に必ず『光が当たるタイミング』を作り出し、美しいハーモニーを奏でることなのです」
プレーヤーごとの強みを見極め、適切なタイミングで主役を張らせる。ドラマーとして培った「テンポ管理」と「アンサンブル」の思考が、ボイルSVPの組織経営の根幹を支えている。
長年、日本市場と深く関わってきたボイルSVPの目には、日本市場の変化はどう映っているのか。
「日本のビジネスパーソンは、PCを単なる業務ツールではなく、イノベーションを起こす中核として捉え直すようになりました。そして、彼らが何より重視するのが『持ち運びやすさ』つまり『イチキロ、ミマン』(1キロ未満)の操作性です」
「1キロ未満」と聞けば、かつて軽量性と堅牢性で日本の支持を集めた日本市場向け超軽量名機「Dragonfly」(ドラゴンフライ)を思い浮かべる。記者がその復活の可能性について尋ねると、ボイルSVPは「Dragonfly……それは本当に素晴らしいアイデアだね!」とチャーミングな笑みをみせた。
セキュリティとAI処理を端末内で完結させるAI PCの台頭とともに、日本市場に特化した次世代超軽量モデルの登場に、期待は高まるばかりだ。
サイバー攻撃という不条理な脅威に対し、企業が単なる「機器の調達」だけで身を守れる時代は終わった。クラウドに頼らないエッジAI技術によって漏えいリスクを根本から遮断し、現場の主体性を引き出すHPのアプローチは、セキュリティと働き方の双方に悩む日本企業へヒントを与える。
現場を支える1キロ未満の機動性と、コンサルとして伴走するパートナーシップ。PCというビジネスの原点から始まる同社の姿勢は、日本企業が“攻めのイノベーション”へ転じる足がかりとなるはずだ。
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