需要が消え、設備が老い、人が減る――西武鉄道、144両更新の裏側 「大手なのに恥ずかしい」を受け入れたワケは(2/3 ページ)

» 2026年10月15日 07時00分 公開
[平 行男,ITmedia]

人手不足、業務も育成も負担増 「じっくり育てるやり方は通用しない」

 3つ目の課題である人手不足には、人材への投資と、限られた人員で運営するための省力化の2本立てで臨む。初任給の引き上げは5年連続、賃金の引き上げは4年連続。乗務員が使う宿泊施設の個室化や休憩所の整備も進める。キャンピングカーを改造した移動式休憩所は、西武秩父線での休憩や台風警戒時の待機場所として使っている。

 省力化が要るのは、現場の姿が変わったからだ。町田氏が入社した1990年代初頭、ターミナル駅のラッチ(改札口)には係員が並び、新入社員はそこで一日中切符を切り、数年かけて仕事を覚えた。しかし今は、始発・終着駅を除く中間駅を2人で回し、1人が休憩に入れば残る1人が全ての業務を担う時間帯もある。

 「一人一人の守備範囲が大きくなり、デジタルの窓口処理機まで入社数カ月で使えなければならない。長くいる前提でじっくり育てるやり方は通用しなくなった」と町田氏は語る。

通勤車両144両が“工場へ里帰り” 西武鉄道が手放した「自前主義」

 西武鉄道が直面する課題や制約が大きく影響したのが、主力列車である20000系の更新だ。20000系は「環境と人にやさしい」をテーマに、2000年2月にデビューしたアルミ車体の通勤車両で、日立製作所の笠戸事業所(山口県下松市)で製造された。導入から四半世紀がたち、10両×8編成、8両×8編成の計144両が大規模更新の時期に入った。

 他社から譲り受けたサステナ車両の改造工事が並行し、改造作業に使う車庫のスペースにも設計リソースにも制約がある。場所も人も限りがある中で、更新をいかに終えるか――これが、検討のスタートラインだった。

 仮に自社で場所と技術者をそろえても、改造が終わった後にその設備と人員をどう抱えるのかという問題が残る。「自分たちでやることとアウトソースすることを分け、長い目で考えようと決断した」(町田氏)

 そこで西武鉄道は、製造元である日立製作所に車両改造業務を委託した。埼玉県の小手指車両基地から笠戸へ送り、更新して小手指に戻す。ルートの総移動距離は1000キロに及ぶ。笠戸事業所で製造された車両が里帰りしてリニューアル工事を受けるのは初の取り組みだ。

 更新後の車両は、2028年から順次運行を開始する。主要機器の更新に加え、木目調の床材や濃いブルーの座席、全車両へのフリースペース設置など内外装も刷新する。

photo 20000系里帰りリニューアルのイメージ(出所:西武鉄道の講演資料)

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