続いて「代替品の脅威」です。
2026年10月、AIによる画像・動画制作ソフトを開発するArtCraftが「Adobe Creative Cloud」のクリエイティブツール群や「MicrosoftのOffice」のソフトウェア群をオープンソースソフトウェアとして一から作り直すプロジェクト「Crafting Apps」を公表しました。文書作成、表計算、プレゼンテーション、画像編集、ベクターイラスト、動画編集、PDF編集、CADなど、12のアプリをRust言語でゼロから開発する計画です。すでにいくつかのアプリはアルファ版が公開されており、無料で利用できます。
注目すべきは、各アプリが「Agent-ready」として、AIエージェントから操作できるよう設計されている点です。AIエージェントがソフトウェアを自律的に操作する時代を見据えた作りになっています。
かつて「Photoshop」や「Illustrator」のようなソフトウェアを一から開発するには、巨大な開発チームと長年の蓄積が必要でした。その参入障壁の高さこそが、既存ベンダーの競争優位の源泉でした。
しかし、AIによるコーディング支援が普及することで、開発の労力は劇的に下がっています。「他社にはまねできない独自機能」という差別化の壁が「技術の民主化」によって低くなっている側面は、前回の記事でも指摘した通りです。
(参照:前回の記事「「競争を避けたい」事業者VS.「競争を維持したい」自治体 ベンダーロックインの「3つの戦略」を知り、回避せよ」)
自治体が調達するシステムにも、同じ構造が当てはまります。
これまで特定のベンダーにしか構築できなかったシステム機能が、AIの支援によって他の事業者でも構築可能になれば、それは「代替品」が登場したことを意味します。代替品が登場すれば、既存ベンダーの交渉力は下がり、自治体にとってはよりよい条件での調達が可能になります。
ただし、ここでも「機能の代替」と「関係の代替」は別問題です。ソフトウェアの機能が代替可能でも、そのシステムを日々運用し、トラブルに対応し、自治体の課題を相談できる相手としての価値は、簡単には代替できません。ArtCraftのアプリがPhotoshopの機能を代替できても、Adobeが提供しているカスタマーサポートやトラブルシューティングの体制まで代替できるわけではないのと同じです。
「競争を避けたい」事業者VS.「競争を維持したい」自治体 ベンダーロックインの「3つの戦略」を知り、回避せよ
なぜ自治体のベンダーロックインは繰り返されるのか? 背景にある「発注者の3つの心理」
24.6万件の個人情報が漏えいか デジタル庁GSSへの不正アクセスで見えた「ゼロトラスト」の落とし穴
退職は“裏切り”か? 自治体は「辞める職員を育てよ」AI時代の人材戦略Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング