AIは、この境界線を動かします。これまで「自社固有」で内製するしかなかった業務が、AIによって「汎用化」され、外注(あるいはAIへの委譲)が可能になる領域が広がっています。河内長野市が「脱コンサル」を宣言できたのは、計画策定の基礎調査やデータ整理、素案作成といった作業が、AIによって「汎用化」されたからです。
しかし、全てが「汎用化」されるわけではありません。
河内長野市の西野市長は冒頭に紹介した会見で「住民に近い身近な存在の職員が作る計画のほうがより精緻なものができる」とも述べました。この「住民に近い」という属性は、まさに「自社固有」の領域です。その自治体の地域課題、住民の実情、行政の現場感覚など、これらは予測が困難で、契約で仕様を定義しきれないものです。AIがどれだけ進化しても、特定の自治体の地域文脈を理解し、何を解決したいのかを言語化する力は、その自治体の職員にしか持てません。
これこそが、自治体のコアコンピタンス(他にはまねできない独自の強み)ではないかと筆者は考えます。
汎用的な領域は、AIで内製するも外注するも、とにかくコストを下げるべきです。一方、住民の実情を理解し、地域課題を言語化し、解決の方向性を構想する力は、AIが代替してくれません。「自治体固有か、汎用的か」を見極め、固有の領域を大切にすること。それこそが、AI時代の自治体の戦略ではないでしょうか。
「競争を避けたい」事業者VS.「競争を維持したい」自治体 ベンダーロックインの「3つの戦略」を知り、回避せよ
なぜ自治体のベンダーロックインは繰り返されるのか? 背景にある「発注者の3つの心理」
24.6万件の個人情報が漏えいか デジタル庁GSSへの不正アクセスで見えた「ゼロトラスト」の落とし穴
退職は“裏切り”か? 自治体は「辞める職員を育てよ」AI時代の人材戦略Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング