半導体市場の成長が止まらない。米国の半導体工業会(Semiconductor Industry Association)は10月5日、1〜8月で、世界の半導体売上高が1兆ドル(約158兆円)を超えたと発表した。12月には1兆6000億ドルを上回る見通しだ。
10月15日には、半導体受託生産大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、2026年7〜9月期決算を発表。売上高は1兆4942億台湾ドル(約7兆2900億円)で前年同期比50.9%増となり、同社史上最高を記録した。
“半導体ブーム”の中、日本はどうか。1980年代には、日本の半導体産業が世界を圧倒した。NEC、日立製作所、東芝などが「高品質」「大量生産」などの強みを生かして躍進したが、その“黄金期”は過去のものになった。
当時を知る日立製作所の無藤里志氏(モノづくり戦略本部 シニアアドバイザー兼インダストリアルプロダクツビジネスユニット モノづくり統括)は、自身の経歴に触れながらこう振り返る。
「1985年に日立製作所に入りました。当時は『電子立国ニッポン』という時代で、半導体や液晶、CRTディスプレイなどの生産に従事しました。しかし、ご存じの通り敗れ去りまして、事業撤退に至りました」
高い技術力を持つ日本の半導体メーカーは、なぜ勝てなかったのか。都内のシンポジウムに登壇した無藤氏が「ルネサスがTSMCに敗れた理由」を語った。
本記事は海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所、日本能率協会コンサルティングが開催した「造船業界におけるAI・ロボティクス普及に向けたシンポジウム」内の講演の一部を記事化したものです。
無藤氏は「モノづくりDXの進め方」という話題から始めた。製造業には、生産計画や人員配置の最適化、適切な在庫管理、ダウンタイムの削減、省エネルギーへの対応などが求められる。これらを実現するには、作業現場(フィジカル)とサイバー空間(デジタル)を結び、データをリアルタイムに把握しなければならない。しかし、それを実現するのが難しい。
「海外では、現場が勝手に動かないため、フィジカルとデジタルがあまり乖離(かいり)しません。しかし日本は、現場がどんどん『改善』するため、知らない間に『やっていることが変わっていました』というのがよくある話です」
分かりやすい例が「ERP」(企業資源計画)だ。ERPシステムを導入すれば、在庫管理や発注処理を自動化したり、生産管理を最適化したりできる。しかし、無藤氏は「日本の会社はERPシステムを使えないんですよ。なぜなら、現場が勝手に進化してしまうから」と指摘。ERPシステムと業務フローが適合せず、自動化や最適化のメリットを享受できないというのだ。
無藤氏は、自身が管轄する工場でDXを推進する際、初めに「MRP(Material Requirements Planning)による自動発注」を実施している。MRPは「資材所要計画」の略で、部品や材料など必要なものを、必要なときに、必要な分だけ調達するための計画だ。MRPに基づく自動発注を実現させるには、製品の構成部品表(BOM:Bill of Materials)や製造工程表(BOP:Bill of Process)の把握、受発注情報の管理、工場全体の状況把握と最適化が欠かせない。MRPに取り組めば、業務の全体を把握することができ、DXにつながるというわけだ。
無藤氏は、製造工程や作業手順を体系的にまとめたBOPが重要だと強調する。工場などの製造現場にIoTセンサーなどを導入し、現場全体のデータを取得するだけで終わるのではなく、集めたデータをBOPとして工程表に整理するのが肝心だ。
BOPの活用で先行しているのが、半導体業界だ。
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