ここで佐藤氏が使うのが「自家発電」という言葉だ。
人材育成や組織改善では、外部のコンサルタントや専門家から知見を得るケースも多い。それに対して、自社のデータとAIを使い、自分たちで課題を整理し、施策まで考える。これがカオナビのいう自家発電だ。
「企業自身がデータとAIを使って、自分たちで人材育成や組織改善をする。そういう状態をつくりたいです」(佐藤氏)
例えば、多忙を極める現場マネジャーが、部下との1on1の文字起こしログをAIに読み込ませ、自らの傾聴姿勢や指導の偏りについて客観的なフィードバックを受ける。あるいは異動検討の際、要件を入力するだけで「過去に類似のキャリアパスで成果を出した隠れた人材」の候補リストが瞬時に提示される。これまで人事部門への申請や外部研修に何週間も費やしていた業務を、現場の手元で即座に完結させる。これこそが、カオナビの狙う「自家発電」の姿だ。
すでに複数企業と、R&Dに近い形で取り組みを進めているという。大手企業では、社員のキャリア形成に加え、多忙なミドルマネジャーをどう支援するかへの関心も高い。
「従業員の方がキャリアをAIにまず相談する。マネジャーも自分の業務の一部をAIに代替してもらって、本来マネジャーがやるべき仕事をもう少しやる。そういったトライアルを進め始めています」(佐藤氏)
人事部門だけがAIを使うのではない。現場で働く人自身が使う状態をイメージしている。
こうした構想を形にするため、カオナビは10月にAIエージェント「KTi」(ケーティ)をリリースした。クラウド型タレントマネジメントシステム「カオナビ」に蓄積された評価やスキル、サーベイなどの情報を読み解き、利用者との対話を重ねて意思決定に寄り添う。答えを示して終わりにしない「思考の伴走」が特徴だ。
第1弾として、10月から順次「キャリア相談エージェント」と「人材検索エージェント」を提供する。前者は小さな問いと回答を重ね、本人もまだ言葉にできていない気付きに近づいていく。後者は、あいまいな条件を自然な言葉で伝えるだけで、該当する人材を探し出せる。AIがデータを参照するのは、カオナビに設定した権限の範囲内だけだ。
現場での活用を起点に、1on1や評価、配置・育成の検討、そして経営層の意思決定へと、支援する領域を段階的に広げていく計画だ。
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