業績好調の独立系インフラベンダーでありながら、あえて自ら「上場企業」の看板を捨て、大企業の懐へと飛び込んだ──。
日本のインターネット黎明期からネットワーク構築をけん引し、高度な技術力によって大規模自治体や大企業のシステムを支え続けてきたネットワンシステムズ。2024年、同社が、住友商事グループのシステムインテグレーター(SIer)であるSCSKの子会社となり、業界に大きな驚きを与えた。
この前代未聞のディール(取引)は、経営不振による身売りではなく、自らの手で将来の成長を描くために仕掛けた「極めて戦略的な攻めの統合」だった。
売上高約2000億〜3000億円規模だったネットワンシステムズと、売上高約5000億円規模(ネットワンシステムズ統合前)を誇るSCSK。この2社は、いかにして一つの巨大な「次世代IT企業」へと生まれ変わろうとしているのか。
2027年4月の完全統合に向け、ネットワンシステムズは独立系ネットワークインテグレーター(NIer、企業の通信ネットワークシステムの企画、設計、構築から運用・保守までを総合的に請け負う)としての歴史に区切りをつけ、新たな成長フェーズへと踏み出そうとしている。
同社のイノベーション創出拠点「netone valley」(ネットワン バレー、東京都品川区)で指揮を執る取締役 執行役員 COOの田中拓也氏を取材した。SCSKとの統合の「真の狙い」とは? 「攻めのPMI(組織統合)戦略」と、次世代リーダーにバトンを託す経営者の覚悟に迫った。
田中拓也(たなか・たくや) ネットワンシステムズ株式会社 取締役 執行役員 COO。1992年日本ユニシス(現BIPROGY)入社。日本シスコシステムズ(現シスコシステムズ合同会社)西日本営業本部長などを経て、2009年ネットワンシステムズ入社。ネットワンシステムズ執行役員、傘下のネットワンパートナーズ代表取締役社長などを経て、2024年より現職(以下クレジットのない写真はMM総研撮影)ネットワンシステムズは、売上高約2000億〜3000億円規模を誇る独立系NIerの雄だ。一方のSCSKは、売上高約5000億円規模(ネットワンシステムズ統合前)を誇る住友商事系のSIer。従来、IT業界では「インフラ構築のNI」と「アプリ開発のSI」ですみ分けがなされていたが、インフラからアプリまでを一括提供する「ワンストップ化」を狙い、両社は手を組んだ経緯がある。
ネットワンシステムズは近年、業績面で好調を維持してきた。それにもかかわらず、なぜSCSKとの統合を選択したのか。田中COOはその背景について、事業シナジーを挙げる。
業績が悪化した末の身売りではなく、業績が良いタイミングだからこそ、自らの意思で最適なパートナーを選ぶべきだと考えたという。
「複数の選択肢を検討しましたが、当社のネットワーク事業と領域が被らず、かつアプリケーション開発に強みを持つSCSKとの統合は、非常にパズルのピースが合うと感じました。実際、統合を発表した際は、業界関係者から『あっぱれ』というメールをもらったほどです」
統合プロセス(PMI)は、現在も段階的に進めている。2026年4月には、両社のディストリビューション(パートナー企業向け製品販売)事業を先行して合流させた。ここで特徴的なのは、ネットワングループ側の組織の箱に、SCSK側からほぼ同数(数百人)が合流した点だ。買収元に飲み込まれるどころか「対等な関係での統合」を体現している。
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