【第9回】順調に見えた改革案、意外な「致命的欠陥」とは?:「働き方改革」プロジェクトリーダーを命ず(1/3 ページ)
順風満帆に進んでいるように見える働き方改革案作り。しかし「このままでは失敗です」と異議が。
前回までのストーリー
X製作所の働き方改革・業務改革は、新たな段階を迎えていた。最初の3カ月で集中的に討議して出し切ったRPA(ロボットによる業務自動化)を活用した改革施策に、会議・資料改革を加え、「実行フェーズ」に入ったのだ。施策案の中には、思わぬ障害に直面し、結局断念せざるを得なかったものや、いざ実行してみると思ったほどの効果が上がらないものもあった。
しかし、そのたびに、プロジェクトチームでは代わりとなる施策を見つけ出してきた。
「AがダメならBを検討しよう!」
「もっと割り切れば実現できるのでは?」
「Cは効果が小さい、優先度を落としてDとEを実行しよう!」
こうした議論が自然に行われるようになっていた。プロジェクトチームは改革を進めることに、明らかに「慣れて」きていた。楽しんでいるようにさえ見えた。
あらためて日野下は実感するのだった。
「意識改革とはこういうことなのか!そして社長の本当の狙いはこの状態を作りだすことにあったのだ!」
会議・資料改革では、滝柄総務担当役員の奮闘で、全労働時間の30%近くを占めていた会議・準備時間を20%削減する目標を立てるところまでたどりついた。小田社長の言葉を借りれば、「手術」と「生活習慣見直し」の合わせ技で、結果的には業務改革と会議・資料改革で30%程度の余力創出が現実味を帯びていた。
順調な進捗を受けて、今日のステアリングコミッティでは、簡潔な報告と課題の討議の後、プロジェクトメンバー全員が、竹中による「限られた時間で必ず結論を出す技術研修」を受講している。
改革案作りは一見順調……?
竹中: こうした会議の技術をせっかく社員が身に着けても「台無し」にするのは、皆さん、管理職ですよ。これからは、「俺が決める!」とかなしです。芝田さん、よろしいですね。
芝田: わ、分かってます、分かってますわ。竹中さんにはかないませんなあ。こう見えても私は自覚しとるんです。鬼とかなんとか言われとるのを。こないだも、『6秒怒りに耐える研修』を受けてきましたわ。
竹中: アンガーマネジメントですね。
日野下は心の中でつぶやく。
「キックオフ時とは全く雰囲気が変わった。このままあと1カ月進めれば、あとは巡航速度だな。進捗をしっかり見ておけば成果は出るだろう。まさか半年弱でここまで来れるとは」
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