「駅のホームドア」が普及しているが、安全基準はどうなのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/8 ページ)
京王電鉄京王線で発生した傷害放火事件は記憶に新しいが、犯人の動機などは社会学、心理学の範疇(はんちゅう)で鉄道側としてはなんともしがたい。ただし、鉄道については「防犯」と「防災」の議論が起きた。ホームドアなどの関連する各種施設や機器とその運用、これまでの法令等を見ながら、課題や今後のあり方を考える。
さらに21年6月にも鉄道運輸規程第25条を改正した。第25条は第23条の禁止物のうち、「座席や通路を塞いだり壊したりするおそれのあるもの」について、加算運賃の請求や強制下車を定めている。ここに第2項として「手荷物検査」条項を追加した。
東京オリンピック・パラリンピックに向けたテロ対策の意味合いもあって、「鉄道係員は乗客に対し、旅客または公衆の立ち会いのもとで携帯する物品を点検できる」「点検または協力を拒否した場合、旅客を車外または鉄道用地外へ退去要求できる」だ。
旧第23条は発火性のあるものなどを「うっかり」持ち込まないように規定した規則。旧第25条も「うっかり」大きな物を持ち込んだ場合の罰則を定めている。そこに悪意を想定していない。
そして改正はどちらも「悪意ある人物の乗車」を想定している。しかし、規則を定めただけで、犯罪を防止できなかった。手荷物検査は行われず、小田急電鉄でも京王電鉄でも犯行が行われた。
手荷物検査については「鉄道利用の実態とそぐわない」という考え方だ。大勢の通勤客に手荷物検査は難しい。新幹線にしても、航空機のような手荷物検査、ボディーチェックを実施するには、新たに検査場を設け、検査済み乗客の待合室が必要になる。リニア中央新幹線の一般向け試乗会では手荷物検査とボディチェックが行われているけれど、これを新幹線でやるには場所の確保など莫大な投資が必要だ。
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