「駅のホームドア」が普及しているが、安全基準はどうなのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/8 ページ)
京王電鉄京王線で発生した傷害放火事件は記憶に新しいが、犯人の動機などは社会学、心理学の範疇(はんちゅう)で鉄道側としてはなんともしがたい。ただし、鉄道については「防犯」と「防災」の議論が起きた。ホームドアなどの関連する各種施設や機器とその運用、これまでの法令等を見ながら、課題や今後のあり方を考える。
ただし犯罪抑止力を考えるならば、ランダムな検査でも効果があると思う。筆者は日本からサンフランシスコ国際空港に到着したとき、身に覚えがないのに係員に呼び止められ、カバンの中身をすべて開けるよう命じられた。初めは驚いたけれども複数の言語で書かれた「関税違反を防止するためのランダムなチェックです。ご協力をお願いします」というカードを見せられてホッとした。
「食べ物はもっていますか」「ないよ」「これは何ですか」「あ、ごめん、イカクンだ。イカの燻製」「イカクン? フード?」「ごめんフード、フィッシュみたいな」そんなやりとりをして解放された。大勢の旅客の前でやられたから恥ずかしい思いをしたし、これで禁止物が入っていたら面倒なことになっただろう。そして、今後、持ち込み物品には気をつけようと思った。公衆の面前だったから、私を見た人々も「あんな目に遭いたくない」と思うはず。つまりこのチェックは有効だと思う。
日本の大都市の鉄道では自動改札が普及している。新幹線改札も自動改札機だ。そこで、数百人に1人、つまり1列車につき1人程度の割合でランダムに改札機をふさぎ、検査を実施してはどうだろう。有人改札でやれば「風貌で選んだのか」とクレームになりそうだけど、自動改札なら「機械が選んだので」と言い訳もできる。
ほとんどの乗客はすり抜けてしまうけれども、検査で発覚するリスクが少しでもあれば、犯罪者は駅に近寄らないかもしれない。最も、そういう冷静な判断力がないから犯罪を起こすともいえるが……。
関連記事
- “日本一高い”北総鉄道は値下げできるのか 「やはり難しい」これだけの理由
千葉ニュータウンを走る北総鉄道は日本一運賃が高い鉄道の1つ。理由は膨大な建設費が運賃に乗っていたから。しかし6月23日発表の決算には、2022年に累積損失を解消、値下げを検討するとある。値下げされても残念ながら相場より高い運賃が続く懸念がある。そこで筆者が、確実に値下げする方法を考えてみた。 - 渋谷で「5000円乗り放題」を始めて、どんなことが分かってきたのか
長距離バスの運行などを手掛けているWILLERが「月5000円で乗り放題」のサブスクプランを打ち出したところ、利用者がじわじわ増えている。4カ月ほど運営してみて、どんなことが見えてきたのかというと……。 - 2025年の大阪・関西万博で、鉄道の路線図はどうなるのか
2025年に大阪、夢洲で「2025年大阪・関西万博」が開催される。政府は主要公共交通機関に大阪メトロ中央線を位置付けた。このほか会場へのアクセスには船とバス、さらに具体化していない鉄道ルートが3つ、近畿日本鉄道の構想もある。また会場内の交通には、3種類のモビリティが計画されている。 - 中央快速線E233系にトイレ設置、なんのために?
JR東日本の中央線快速で、トイレの使用が可能になることをご存じだろうか。「通勤電車にトイレ?」と思われた人もいるかもしれないが、なぜトイレを導入するのか。その背景に迫る。 - 定期代が上がる!? 鉄道の“変動運賃制度”が検討開始、利用者負担は
鉄道で「変動運賃制度」の検討が開始された。そもそも、通勤通学定期券によるボリュームディスカウントは必要だったのか。鉄道会社の費用と収益のバランスが、コロナ禍による乗客減少で崩れてしまったいま、改めて考えてみたい。 - 電車を止めよう――勇気を持って主張したい、3つの理由
緊急事態の今、感染拡大を食い止め、医療と社会を立て直すために必要なのは、電車を止めることだ。そこまでするべき理由は「感染」「名誉」「経営危機」の3つ。大変なことではあるが、「通勤を止める」「生活費を支給する」方法がないわけではない。 - 「悪質撮り鉄」は事業リスク、鉄道事業者はどうすればよいか
有料道路を走る暴走族は、道路会社にとってお客様ですか。これと同様に「悪質撮り鉄」は、他の撮り鉄だけではなく、鉄道趣味、旅行ビジネスに悪い影響を与えている。本来、鉄道事業者が守るべきは「お客様の安全」であり、彼らはそれを脅かす存在だ。毅然とした態度が必要となる。 - 新型車投入の横須賀線、“通勤電車ではなかった”歴史と「車両交代」の意味
JR横須賀線に新型車両のE235系が導入されると話題になっている。横須賀線はもともと軍用路線として建設され、その後、観光に使われる長距離列車、そして通勤電車へと役割が変わっていった。E235系投入は、通勤路線への変化という点で重要な位置付けといえる。 - 「通勤」は減っていく? 東急の6700人アンケートから読み解く、これからの鉄道需要
東急は、アプリを通じて6760人に実施したアンケート結果を発表した。新型コロナの影響で在宅勤務などが広がり、鉄道の需要は低下。しかし、今後も定期券を更新する人は多く、転居しようとする人も少ない。通勤需要は元通りには戻らないが、ある程度回復しそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.