「駅のホームドア」が普及しているが、安全基準はどうなのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(7/8 ページ)
京王電鉄京王線で発生した傷害放火事件は記憶に新しいが、犯人の動機などは社会学、心理学の範疇(はんちゅう)で鉄道側としてはなんともしがたい。ただし、鉄道については「防犯」と「防災」の議論が起きた。ホームドアなどの関連する各種施設や機器とその運用、これまでの法令等を見ながら、課題や今後のあり方を考える。
実は、ホームドアについては明確な設置基準が定まっていない。鉄道施設の設備は「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」で規定されている。例えば線路について「曲線では高速でも列車が転覆しないように傾き(カント)を作れ」とか、「高電圧の電車線の区間を走行する車両にあっては、異常時に電車線を強制的に停電させることができること。」など、11章120条の決まり事がある。
明治時代から昭和にかけて作られた5つの省令を01年にまとめており、法律ではないけれども、鉄道会社はこの省令に基づいて技術基準を策定し、国も実施されているか審査する。内容は「そんなの当たり前だろ」という決まり事だけれど、裏を返せば、過去にはその当たり前を守らないで事故を起こした歴史もあったということだ。
この「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」において、ホームドアに関する記述はない。ホームには基準があって、その路線を走る最長の列車より長くすること」(第36条の1)、「ホームの幅、柱、跨線橋口、待合所の壁などは旅客の安全かつ円滑な流動に支障を及ぼすおそれのないもの」(第36条の2)などがある。ホームドアに関する基準は「列車の速度、運転本数、運行形態などに応じ、プラットホーム上の旅客の安全を確保するための措置を講じたものであること」(第36条の3)だけだ。
この省令は具体的な数値などは記載されていない。「安全かつ円滑な流動に支障」とは何かという話は、別途「鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準(PDF)」という通達があって、例えばホームの幅は「両側を使うものは中央部3メートル、端部2メートル以上、片側を使うものは中央部2メートル以上、端部1.2メートル以上」と数値を明示している。
ホームドアに関しては、「列車が時速150キロメートル以上で通過するホームにはホームドアを設けること」「列車が通過する場合に旅客がホームにいないような措置を講ずる」「ホーム係員による旅客への注意喚起などにより旅客の安全を確保する」などがある。
また「ホームドア又は可動式ホーム柵の開口部とプラットホームの縁端との間は、旅客の居残りを防止する措置を講ずること。「可動式ホーム柵は、旅客が通常の使用において、プラットホームからの転落や列車への接触を十分に防止できる構造であること」とある。
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