2015年7月27日以前の記事
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お金が見る見る溶けていく――投資初心者がハマる「レバレッジ投信」、2022年は最悪のリターンに?古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/4 ページ)

「少ない資金で大きなリターンが得られる」――そうした触れ込みを基に、投資初心者を中心に人気を博していたレバレッジ投信だが、2022年に入って大きな逆風が吹いている。海外では業者への規制が進むが、日本ではまだ手ぬるいようで……

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 このようなハイリスクのレバレッジ型投資信託に対する関心は、日本だけでなく米国においても強いものであったようだ。先週には、米国証券取引委員会(SEC)のゲイリー・ゲンスラー委員長が、米国個人投資家の間で熱狂を極めるレバレッジ型ETFへの傾倒について新しい規制の必要性を示唆した。これらの商品は非常に短い期間 (場合によってはわずか1日) でリターンを提供することを目的としており、一般的な投資家にとってリスクが高いという理由だ。

 SECでは特にレバレッジ型投資信託のような、短期取引のみを目的として設計された金融商品を不適切に推奨した事業者を追求する姿勢を示している。21年には同委員会がスイス系のUBSウェルスマネジメントUSAに対して800万ドルの和解金を支払わせるほか、投資アドバイザー企業数社に対する措置も講じた。

 そんなレバレッジ型投資信託の規制強化が囁かれる米国では、レバレッジ型の商品はその名称に「Daily」つまり、日次の変動率に対して2倍、3倍になるといった部分を表示する商品も多く、長期投資には向かない旨を顧客募集の時点で相当に強調している様子がうかがえる。

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SOXLなどレバレッジETFを提供するDirexionの公式Webサイト。「日次でリセットされる」というレバレッジ型商品のデメリットをアイコンやキャッチコピーに使用している。

国内では長期投資に推奨も

 一方、国内証券会社においては、依然としてレバレッジ型の投資信託を積立投資のような長期投資に活用するよう推奨している業者も多い。個人投資家に対して、必要以上に大きなリスクを取ることを推奨していると見られても仕方がない例も散見される。

 例えば、大和アセットマネジメントでは、レバレッジ型投資信託を積み立てで長期運用するための運用手法「ツミレバ」専用の特設ページを構える身の入り用である。「ツミレバは『積立』と『レバレッジ』を組み合わせた、従来の常識にとらわれない、新しい投資の選択肢です」というキャッチコピーこそあれ、レバレッジファンドが短期運用を前提として設計された商品ということは一切言及されていない。

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大和アセットマネジメントの公式Webサイト。レバレッジ型投資信託を積み立てる手法を「常識にとらわれない」投資として解説している

 楽天証券では、レバナスのページ下部に位置するダウンロード用PDFにおいて「中長期の投資には向かず、比較的短期間の投資に向いている金融商品です」と記載しながらも、多くの顧客がまず目にする「レバナス」特集ページでは、「毎月3万円、20年の積立で2億円近くになりました」といった長期運用のシミュレーション結果を掲示しているなど、同じWebサイトの中でも矛盾的な記載が目立つ形となっている。

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楽天証券の公式Webサイト。目論見書追加記載事項のPDFファイル(画像内左)では短期投資に向いていると注意喚起しているが、特集ページ(画像内右)では20年の運用シミュレーションを掲示しており、長期投資に向いていない旨には触れられていない。

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