お金が見る見る溶けていく――投資初心者がハマる「レバレッジ投信」、2022年は最悪のリターンに?:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/4 ページ)
「少ない資金で大きなリターンが得られる」――そうした触れ込みを基に、投資初心者を中心に人気を博していたレバレッジ投信だが、2022年に入って大きな逆風が吹いている。海外では業者への規制が進むが、日本ではまだ手ぬるいようで……
これを上回る損失を被ったのは、いわゆる「SOXL」投資家だろう。SOXLとは、Direxion社が運用するICE半導体指数をベンチマークにおいたETFで、そのレバレッジ比率はレバナスや他の一般的な2倍のレバレッジ型商品よりもさらに高い3倍の日次値動きを示す金融商品だ。
SOXLの価格は22年の頭に72.10ドルであったが、10月14日には6.93ドルの安値をつけ、わずか10カ月で脅威のマイナス90%超えを果たした。同期間で急速に進行した円安・ドル高により、円建てで見た評価額でいえば幾分か傷口は浅くなっているであろうが、そもそもの価値が9割減となっていることから、ほんの気休め程度の押し上げ効果にしかなっていない。
仮に22年の頭、SOXLに300万円を投じていたとしたら、足元では円安の効果を加味してもせいぜい40万円程度にしかならない。レバレッジ型の投資信託には、これまでの連載で取り上げた減価や繰上召喚をはじめとしたさまざまなリスクが存在しているが、やはり日次の値動きに対して何倍ものレバレッジをかける点が最も大きなリスク要因といえるだろう。
SOXLが元の値段に戻るには、原指数のICE半導体指数が最低でも現在の値段から3倍以上にならなければ厳しいだろう。レバレッジなしであればICE半導体指数が年初からの30%下落を取り戻して133ドルまで戻れば収支がトントンになる。しかし、10分の1に下がったものを1に戻すためには、10倍のリターンが必要だ。つまり、SOXLが原指数の3倍の値動きをするとしても、最低3.3倍以上の値上がりが損益分岐点となる(そして、その価格に達するまでの期間が長くなるほど必要となる倍率は上がる)。
さらにSOXLが年初来高値を超えるためには、原指数のICE半導体指数が年初来高値の133ドルから2倍以上となる270ドルまで、できるだけ短期で株価が急騰しなければならない。しかし、足元の高金利状況を踏まえると近い将来にそのようなイベントが起こるとは言い難いのではないだろうか。足元のドル高・円安も無限に続くわけではないことを考えると、円高が米国株のレバレッジ型投資信託における運用成績に追い打ちをかけるリスクもある。
関連記事
- AI vs 絵師の戦争勃発? たった10円以下で本格イラストをつくれる「NovelAI」は人類の仕事を本当に奪うのか
AIを使ったイラスト生成サービスが話題だ。一部では、絵師たちの仕事を奪うのではないかという危惧も出始めているが、実際のところ、どうなのか。筆者が実際に「Novel AI」を使ってイラストを制作するとともに、絵師とAIの未来を考えてみた。 - 温泉宿のクチコミランキング 3位「伊香保温泉 ホテル木暮」、2位「効能溢れる癒しの湯治宿 玉川温泉」 1位は?
楽天トラベルが「お風呂のクチコミ評価が高い温泉宿ランキング」を発表した。クチコミを基に、1〜10位までをランク付けしている。その結果、3位には伊香保温泉、2位は玉川温泉の宿がランクイン。果たして1位はどこだったのか? - 都道府県別、人気の移住先ランキング 北海道、兵庫県を抑えた1位は?
移住・関係人口促進サービス「SMOUT」を運営するカヤックが、約4万人のユーザー動向から調査した人気の移住先ランキングを発表した。市区町村と都道府県別にランク付けしている。 - 初デートで「なし」なメニュー 3位「ギョーザ」、2位「ジビエ」、1位は? ファミレス容認派の割合も明らかに
ホットペッパーグルメ外食総研が初デートでの「あり」「なし」ランキングを発表した。SNSで話題になることも多い「ファミレス初デート」容認派の割合や、「あり」「なし」な店・メニューが明らかになった。 - 4000人に聞いた「好きなお菓子」、1位は? 今夏売れたアイスも明らかに
プラネットが、おやつ・お菓子に関する調査結果を発表した。4000人規模の調査から、好きなお菓子や今夏売れたアイスが明らかに。 - ドミノ・ピザ、値下げキャンペーンの一方で“6%値上げ”していた 告知不十分で不満の声も
ドミノ・ピザが10月3日から、デリバリー・持ち帰りを問わず全注文に対してサービス料を徴収し始めた。現状、告知は公式Webサイトやメールマガジンのみで、告知の不十分感が否めない。なぜ、今なのか。そして、いくらかかるのか。広報担当者を取材した。 - 儲けを取るか、顧客を取るか 苦境続く新電力 石川電力の自己破産は氷山の一角?
10月4日に自然電力がサービス終了を発表し、10月6日には石川電力の自己破産が報じられるなど、苦境が続く新電力。最近では収益性向上のために「市場連動型」の料金プランを導入する企業も出始めているが、茨の道といえそうだ。 - 「ジーユー以上、ユニクロ以下」の価格帯で勝負 FOREVER21、日本市場で“三度目の正直”となるためのカギは?
2023年、日本市場への再チャレンジを発表したFOREVER21。過去に二度の撤退を経験しながら、今回を“三度目の正直”とできるか。勝負する価格帯は、「ジーユー以上、ユニクロ以下」となり、激しい価格競争も想定される中、成功のカギはどこにあるのか。専門家が分析する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.